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文献詳細

雑誌文献

検査と技術36巻11号

2008年10月発行

文献概要

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あとがき フリーアクセス

著者: 桑克彦

所属機関:

ページ範囲:P.1298 - P.1298

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 生活習慣病についての話題が豊富な昨今ですが,フランスにおける疫学研究で面白い報告がありました.それは中年期でHDL-Cの濃度が低いと記憶力の低下や高齢期の認知症につながるということです.これは脂質と短期言語記憶との関係を調べた研究で,HDL-C低値(40mg/dl以下)では,高値(60mg/dl以上)に比べて,記憶障害になっている傾向が強いことが示されています.これは認知症の強いリスク因子であるアポリポ蛋白Eε4(アポE4)遺伝子の有無からは独立していました.HDL-C濃度が低いことは,後期中年期での記憶力低下のリスク因子であるらしいことが今回わかったということです.また,HDL-C低値は認知症のリスク因子でもある可能性も示唆されたということです.HDL-Cと認知症との正確な因果関係はまだ不明ですが,HDL-Cがβアミロイドの形成を防止することや,HDL-Cがアテローム性動脈硬化や血管損傷に作用したり,抗炎症性・抗酸化作用を介したりすることで,記憶に影響を与えることが考えられるとしています.

 話題になっています特定健康診査ですが,HDL-CとLDL-Cの測定は直接法で行うことから,これらの測定試薬の需要が約150%の増加になっているようです.このうちLDL-Cの測定試薬間差が大きな問題になっていますが,血清標準物質の設定がキーになり,反応性評価による試薬の選別が行われています.例えば先般開催されたセミナー(2008年筑波臨床化学セミナー)では,健診者990名の血清(採血後6時間以内)での一斉分析結果と,各試薬の反応特性結果から,試薬は広義のLDLグループと狭義のLDLグループに分けられ,それぞれのグループによって主として健診のみ,健診と脂質異常症の治療のモニターという使い方に大別され,現状で目的に合った試薬の選択が必要になります.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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