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文献詳細

雑誌文献

検査と技術36巻12号

2008年11月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈緊急検査〉

救命救急での薬毒物中毒検査

著者: 福田篤久1 久保田芽里1 石田浩美1 桶野芳樹1

所属機関: 1大阪府立泉州救命救急センター検査室

ページ範囲:P.1354 - P.1357

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病院検査室で行う薬毒物検査の目的

 救命救急領域で実施される薬毒物検査は,その性格上,薬毒物の種類や量など不明瞭な点が多く,希薄な情報量のなかから判断するには困難を要する.また,病院検査室の立場から考えてみても,血液や尿から中毒起因物質を特定することは,はなはだ困難なことである.したがって,中毒起因物質が混在している可能性がある現物そのものを試料として検査することが理想的であるが,この理想的な試料が入手できたとしても,その分析に時間を費やしていたのでは患者にとって不幸な結果を招くこともある.さらに,適切な治療は一刻も早く開始されなければならない.

 言うまでもなく,これらの薬毒物から患者を救う第一のアプローチは,いかに早く中毒起因物質を特定し,臨床現場にその情報を提供できるかにある.また,このような立場で行う薬毒物検査は,事件解明のための検査ではなく,あくまでも患者救命のための検査でなくてはならず,臨床現場に直結する情報の提供が必須である.要するに,この目的を満たすことが可能であれば時間のかかる定量試験よりも,迅速に行うことのできる定性試験の重要性は高く,陽性・陰性のいずれの結果にせよ臨床現場にとって有力な情報になることは疑いないと考えている1~3)

参考文献

1) 奈女良昭,屋敷幹雄,福家千昭,他:薬毒物分析の第一歩―中毒起因物質の推定と同定.中毒研究 19:63-66,2006
2) 福田篤久,石田浩美,久保田芽里,他:「救命救急センターと臨床検査」救命救急センターにおける臨床検査―迅速報告を目指した裏技.Medical Technology 30:417-421,2002
3) 福田篤久,石田浩美,久保田芽里,他:薬毒物混入事件と病院検査室~迅速簡便な薬毒物定性試験の重要性.大阪救急 60:53-54,1999
4) 福田篤久,石田浩美,久保田芽里,他:臨床検査室で行う毒物定性試験.Medical Technology 27:127-132,1999
5) 吉岡敏治,郡山一明,植木真琴,他:薬毒物分析の指針に関する提言.中毒研究 12:437-441,1999
6) 福田篤久,石田浩美,久保田芽里,他:救急医療現場に直結する薬毒物測定の充実をめざして何を測定すればいいのか?.臨床病理 53:26-33,2005
7) 福田篤久,石田浩美,久保田芽里,他:臨床現場における薬毒物検査の実際・3 迅速検査法(アジ化物,界面活性剤)中毒学会提言15項目以外の薬毒物検査.臨床検査 49:568-577,2005
8) 屋敷幹雄(監),奈女良昭,西田まなみ,他:中毒治療に役立つ迅速検査法.じほう,2005
9) 広島大学医学部法医学講座(編):薬毒物の簡易検査法 呈色反応を中心として.じほう,2001
10) 小林寛也,福島弘文:含硫入浴剤とトイレ用酸性洗浄剤を混合することにより硫化水素を発生させ自殺した1例.中毒研究 21:183-188,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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