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ノンコーディングRNAの可能性
著者: 齋藤力1 林崎良英1
所属機関: 1理化学研究所横浜研究所オミックス基盤研究領域
ページ範囲:P.1383 - P.1385
文献購入ページに移動■はじめに―Non-coding RNA worldの発見
ヒトゲノムプロジェクトによるゲノムDNAの塩基配列の決定およびアノテーションによって,遺伝子の総数は22,287と推定された1)が,ゲノムDNA中で蛋白質がコードされている領域はわずか2%以下であることが示された.一方で,マウスおよびヒトでの大規模cDNA(complementary DNA)解析がFANTOM(Functional Annomation of Mouse)1,2,3プロジェクトによって行われ,延べ151,047種類の転写産物の解析から,ゲノム全体の72%以上の領域からRNAが転写されていることが示され,転写産物のうち50%以上は蛋白質をコードしていないRNA(non-protein coding RNA,ncRNA)であることが示された2).さらに,Affymetrix社のGingerasのグループは,ゲノムタイリングアレイチップを用いたヒト21番,22番染色体の転写産物の網羅的解析から,同様に約60%の転写産物はncRNAであることを示した.
このようにncRNAは転写産物のなかで大きな割合を占め,その機能が近年明らかになってきた.本稿では,ncRNAおよびその疾病とのかかわり,臨床検査や創薬に向けた取り組みの概略を述べる.詳細な解説は,栃谷らによる総説3)や,特集「RNA研究の新知見と医療応用への展望」を参照していただきたい4).
ヒトゲノムプロジェクトによるゲノムDNAの塩基配列の決定およびアノテーションによって,遺伝子の総数は22,287と推定された1)が,ゲノムDNA中で蛋白質がコードされている領域はわずか2%以下であることが示された.一方で,マウスおよびヒトでの大規模cDNA(complementary DNA)解析がFANTOM(Functional Annomation of Mouse)1,2,3プロジェクトによって行われ,延べ151,047種類の転写産物の解析から,ゲノム全体の72%以上の領域からRNAが転写されていることが示され,転写産物のうち50%以上は蛋白質をコードしていないRNA(non-protein coding RNA,ncRNA)であることが示された2).さらに,Affymetrix社のGingerasのグループは,ゲノムタイリングアレイチップを用いたヒト21番,22番染色体の転写産物の網羅的解析から,同様に約60%の転写産物はncRNAであることを示した.
このようにncRNAは転写産物のなかで大きな割合を占め,その機能が近年明らかになってきた.本稿では,ncRNAおよびその疾病とのかかわり,臨床検査や創薬に向けた取り組みの概略を述べる.詳細な解説は,栃谷らによる総説3)や,特集「RNA研究の新知見と医療応用への展望」を参照していただきたい4).
参考文献
1) International Human Genome Sequencing Consortiumu:uFinishing the euchromatic sequence of the human genome. Nature 431:931-945,2004
2) Carninci P, Kasukawa T, Katayama S, et alu:uThe transcriptional landscape of the mammalian genome. Science 309:1559-1563,2005
3) 栃谷史郎,林崎良英:Non-coding RNA.生体の科学 57:229-236,2006
4) 林崎良英,安田純(編):RNAの機能解明と医療応用.羊土社,2008
5) Kawahara Y, Zinshteyn B, Sethupathy P, et alu:uRedirection of silencing targets by adenosine-to-inosine editing of miRNAs. Science 315:1137-1140,2007
6) Lu J, Getz G, Miska EA, el alu:uMicroRNA expression profiles classify human cancers. Nature 435:834-838,2005
7) Volinia S, Calin GA, Liu CG, et alu:uA microRNA expression signature of human solid tumors defines cancer gene targets. Proc Natl Acad Sci USA 103:2257-2261,2006
8) 田口歩,高橋隆:ガンの発生と進展過程に関わるmiRNAの異常.林崎良英,安田純(編):RNAの機能解明と医療応用.羊土社,pp163-168,2008
9) 秋山好光,湯浅保仁:miRNA発現プロファイル解析によるがんの診断への応用.林崎良英,安田純(編):RNAの機能解明と医療応用.羊土社,pp173-178,2008
10) Lujambio A, Ropero S, Ballestar E, et alu:uGenetic unmasking of an epigenetically silenced microRNA in human cancer cells. Cancer Res 67:1424-1429,2007
11) 金玲,藤原将寿,中村義一:RNA医薬.林崎良英,安田純(編):RNAの機能解明と医療応用.羊土社,pp193-198,2008
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