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文献詳細

雑誌文献

検査と技術36巻3号

2008年03月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈血液〉

PT正常でAPTT延長の症例に遭遇した場合にどうするか

著者: 小宮山豊1 吉賀正亨1 髙橋伯夫12

所属機関: 1関西医科大学臨床検査医学講座 2関西医科大学付属滝井病院

ページ範囲:P.273 - P.275

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はじめに

 プロトロンビン時間(prothrombin time,PT)正常で活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time,APTT)延長の症例は,典型例としては,先天性で血友病およびその類縁疾患(血友病AとB,von Willebrand病・第因子,第因子,プレカリクレイン,高分子キニノゲン欠乏/異常症),後天性で抗凝固因子抗体〔インヒビター,循環抗凝血素,抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody symdrome,APS)による自己抗体〕および投与薬剤の影響などである1)

 ただし,血液凝固因子異常症全国調査2002年度の報告によると,血友病およびその類縁疾患の大部分である血友病AとBの患者数は,血友病Aが3,841人(男性3,821人,女性20人),血友病Bが842人(男性838人,女性4人)であり,von Willebrand病も血友病に次いで相当数あるが,他の異常は極めて少ない.したがって先天性要因のなかで最も多い血友病でも,その発症頻度は男性1万人に対し,0.8~1人であり,さらにその多くは血液専門医のもとで治療を受けているため,一般の病院で先天性血友病症例に遭遇する可能性は少ない.

 では,臨床検査部で遭遇するPT正常,APTT延長にはどのような症例が含まれるか.検体採取(サンプリング)異常を除外しなければならないのは当然であるが,基礎疾患,治療などさまざまな要因で予期せぬAPTT延長は起こりうる.本稿では,凝固時間検査の特性に触れ,検査部からの情報提供が重要な意味をもつ,特に後天性の比較的特殊な疾患を中心に,後天性血友病およびAPSなどにおける検査診断について解説する.

参考文献

1) 山田俊幸:出血傾向 主要症候・検査による鑑別チャート.猪狩淳,中原一彦(編):標準臨床検査医学.医学書院,p30,2006
2) 田中一郎:後天性血友病 疫学と止血療法.血液フロンティア 16:1787-1794,2006
3) 白幡聡,岡敏明,福武勝幸,他:インヒビター保有血友病患者における遺伝子組換え活性型血液凝固第因子製剤(注射用ノボセブン)の長期的安全性および有効性 5年間の市販後調査中間解析報告.日本血栓止血学会誌 17:331-344,2006
4) 家子正裕,内藤澄悦:【血栓・止血検査の最前線(2)】抗リン脂質抗体症候群における臨床検査の最前線 診断に用いられる抗リン脂質抗体の最近の話題.日本血栓止血学会誌 18:226-233,2007
5) 小宮山豊:【血栓・止血検査の最前線(2)】血小板減少症に関する検査の最前線と応用 TTPおよびHITの検査診断.日本血栓止血学会誌 18:241-246,2007
6) 平田直之,金谷憲明,渡辺政徳,他:抗生物質投与によるビタミンK欠乏に起因すると思われる凝固抑制で硬膜外血腫を来した1症例.麻酔 56:181-185,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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