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Laboratory Practice 〈血液〉
PT正常でAPTT延長の症例に遭遇した場合にどうするか
著者: 小宮山豊1 吉賀正亨1 髙橋伯夫12
所属機関: 1関西医科大学臨床検査医学講座 2関西医科大学付属滝井病院
ページ範囲:P.273 - P.275
文献購入ページに移動プロトロンビン時間(prothrombin time,PT)正常で活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time,APTT)延長の症例は,典型例としては,先天性で血友病およびその類縁疾患(血友病AとB,von Willebrand病・第因子,第因子,プレカリクレイン,高分子キニノゲン欠乏/異常症),後天性で抗凝固因子抗体〔インヒビター,循環抗凝血素,抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody symdrome,APS)による自己抗体〕および投与薬剤の影響などである1).
ただし,血液凝固因子異常症全国調査2002年度の報告によると,血友病およびその類縁疾患の大部分である血友病AとBの患者数は,血友病Aが3,841人(男性3,821人,女性20人),血友病Bが842人(男性838人,女性4人)であり,von Willebrand病も血友病に次いで相当数あるが,他の異常は極めて少ない.したがって先天性要因のなかで最も多い血友病でも,その発症頻度は男性1万人に対し,0.8~1人であり,さらにその多くは血液専門医のもとで治療を受けているため,一般の病院で先天性血友病症例に遭遇する可能性は少ない.
では,臨床検査部で遭遇するPT正常,APTT延長にはどのような症例が含まれるか.検体採取(サンプリング)異常を除外しなければならないのは当然であるが,基礎疾患,治療などさまざまな要因で予期せぬAPTT延長は起こりうる.本稿では,凝固時間検査の特性に触れ,検査部からの情報提供が重要な意味をもつ,特に後天性の比較的特殊な疾患を中心に,後天性血友病およびAPSなどにおける検査診断について解説する.
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