検査と技術36巻4号

2008年04月発行

技術講座 微生物

末梢血におけるマラリア原虫の検出

著者： 大友弘士¹ 赤尾信明¹

所属機関： ¹東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学分野

ページ範囲：P.311 - P.316

新しい知見

　最近の遺伝子工学の進歩により，ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction，PCR)法による病因原虫特異遺伝子の検出も可能になったが，医療機関を問わずいつでもできる検査法ではない．その点，本稿で述べる抗原検出法は特別な装置や顕微鏡を必要とせず，簡便性，再現性，迅速性が高いものである．特異抗原に対するモノクロナール抗体が帯状にコーティングされた濾紙(ディップスティック)に少量の末梢全血をしみこませると，陽性検体ではモノクロナール抗体の位置に赤い線が出現する．HRP(histidine-rich protein)-2検出系が熱帯熱マラリア原虫の診断にやや優れているが，稀に高度の虫血症を呈する患者でも偽陰性を示すことがあるので注意を要する．また，原虫性乳酸脱水素酵素(parasite lactate dehydrogenase，pLDH)検出系も補助診断として有用性が高い．いずれも，流行地滞在中の発熱時の自己診断にも利用でき，有効なスタンバイ治療の可否を判断することも可能である．

参考文献

1) WHOu:uNew Perspectives Malaria Diagnosis. WHO，pp1-47，2001

2) WHO (Western Pacific Region)u:uTowards quality testing of malaria rapid diagnostic testsu;uEvidence and methods. WHO，pp1-23，2006

3) 大友弘士：マラリア診療における診断と治療のコツ．斉藤厚(編)：感染症診療のコツと落とし穴．中山書店，pp188-189，2004

4) 大友弘士，水野泰孝：マラリア．検査と技術　27(増)：906-908，1999

5) Garcia LSu:uDiagnostic Medical Parasitology, 4th ed. ASM press，p173，2001