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文献詳細

雑誌文献

検査と技術36巻5号

2008年05月発行

トピックス

大腸癌腫瘍マーカーとしての尿中N1,N12-ジアセチルスペルミン

著者: 川喜田正夫1 平松恭子2

所属機関: 1工学院大学工学部応用化学科 2東京都臨床医学総合研究所

ページ範囲:P.457 - P.459

文献概要

はじめに

 複数のアミノ基をもつアルキルアミンをまとめてポリアミンと呼ぶ.ヒトの体内にはプトレッシン,カダベリン,スペルミジン,スペルミンの4種類とそのアセチル体があるが,尿中には,アセチルプトレッシン,アセチルカダベリン,N1-およびN8-アセチルスペルミジンの4種類のモノアセチルポリアミンが主として排泄される1).ポリアミンは増殖の盛んな組織で活発に代謝されていること,合成欠損細胞では外からの添加が増殖に不可欠であること,合成の律速酵素であるオルニチン脱炭酸酵素を強制発現させることで細胞の癌化が起こること,などから一種の細胞増殖因子と考えられており,既に1970年ごろから癌患者では尿中ポリアミン排泄量が増加することが指摘されてきた2).しかし,1990年代に入ると,尿中モノアセチルポリアミンは癌でないのに高値を示す偽陽性者や,癌であるのに上昇しない偽陰性者が多く,実用的な腫瘍マーカーとしては役に立たないという評価が定着するようになった3)

 1990年代の初頭,われわれは高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography,HPLC)によるポリアミンの一斉分画分析法を確立して尿中ポリアミン成分の分析を進め,その過程で新規のポリアミン成分N1,N12-ジアセチルスペルミン(N1,N12-diacetylspermine,DiAcSpm)を見いだした.DiAcSpmは尿中ポリアミンのなかでは最も微量の成分の一つであるが,それまで知られていたモノアセチルポリアミンと比較して格段に癌の陽性検出率が高く,新規の腫瘍マーカーとして有望であると考えられたため,われわれはこの尿中DiAcSpmを検査項目として確立し,その普及を図りたいと考えた.そして,DiAcSpm特異抗体を作成して酵素免疫測定法(enzyme-linked immunosorbent assay,ELISA)による簡便なDiAcSpm測定系を作り4),1990年代後半から,大腸癌を中心に尿中DiAcSpmの腫瘍マーカーとしての特性についての本格的な研究を進めてきた5)

参考文献

1) Tabor CW, Tabor Hu:uPolyamines. Annu Rev Biochem 53:749-790,1984
2) Russell DHu:uIncreased polyamine concentrations in the urine of human cancer patients. Nat New Biol 233:144-145,1971
3) Bachrach Uu:uPolyamines as markers of malignancy. Prog Drug Res 39:9-33,1992
-diacetylspermine in human urine. J Biochem 124:231-236,1998
5) Kawakita M, Hiramatsu Ku:uDiacetylated derivatives of spermine and spermidine as novel promising tumor markers. J Biochem 139:315-322,2006
-Diacetylspermine as a sensitive and specific novel marker for early- and late-stage colorectal and breast cancers. Clin Cancer Res 11:2986-2990,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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