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文献詳細

雑誌文献

検査と技術36巻8号

2008年08月発行

文献概要

臨床医からの質問に答える

免疫測定法におけるHAMAの干渉

著者: 亀子光明1 北村弘文2

所属機関: 1長野市民病院診療技術部 2長野市民病院臨床検査科

ページ範囲:P.764 - P.766

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はじめに

 免疫学的方法を原理とする測定法では,被検血清中に存在する異好抗体(heterophile antibody,hAb)により偽陽性反応が起こり,測定結果が異常高値を示す場合がある.この作用機序は1986年Boscatoら1)により,ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin,hCG)測定系において報告されており,その干渉に関与する因子をantibody-binding substancesと表現している.

 現在では,マウス免疫グロブリンに結合するhAbをヒト抗マウス抗体(human antimouse antibody,HAMA)と呼んでいる.

 初期の腫瘍特異的抗体療法では,腫瘍細胞に対するマウスモノクロナール抗体(monoclonal antibody,mAb)を患者に繰り返し投与すると,その抗体は,マウス由来の異種蛋白であるため,高頻度でHAMAが出現し,それが原因でアナフィラキシーが多発したことが報告されている2).また,その治療を受けた患者血清では,サンドイッチ法による癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen,CEA)測定において,偽高値となることも報告されている3,4).本稿においては,免疫反応に及ぼすHAMAの影響やその回避法について述べる5,6)

参考文献

1) Boscato LM, Stuart MC:Incidence and specificity of interference in two-site immunoassays. Clin Chem 32:1491-1495,1986
2) 上田眞也,福岡正博:抗体療法の変遷と種類.The Medical Oncologists 3:13-25,2007
3) Primus FJ, Kelley EA, Hansen HJ, et al:"Sandwich"-type immunoassay of carcinoembryonic antigen in patients receiving murine monoclonal antibodies for diagnosis and therapy. Clin Chem 34:261-264,1988
4) Hansen HJ, LaFontaine G, Newman ES, et al:Solving the problem of antibody interference in commercial "sandwich"-type immunoassays of carcinoembryonic antigen. Clin Chem 35:146-151,1989
5) 大竹皓子,加野象次郎:免疫学的測定法における干渉.検査と技術 25:207-213,1997
6) 亀子光明,青木義政:免疫学的測定法における非特異反応とその対処法.Medical Technology 26:1241-1244,1998
7) 森山隆則,上原聡,鷲尾明子:ヒトIgM型抗マウス抗体(HAMA)による血清CA-125測定における偽陽性反応の解析.臨床検査 40:607-610,1996
8) 三浦寛子,北野充繪,米山彰子,他:IgG性異好抗体によるCA19-9偽高値例の検討とウシ免疫グロブリンによる偽高値の回避.臨床病理 53:1103-1108,2005
9) Park S, Wians FH Jr, Cadeddu JA:Spurious prostate-specific antigen (PSA) recurrence after radical prostatectomy:interference by human antimouse heterophile antibodies. Int J Urol 14:251-253,2007
10) 森山隆則:クレチン症マス・スクリーニングにおけるピットフォール―母体のヒト抗マウス抗体(HAMA)の胎盤移行により見かけ上の高TSH血症を呈した新生児例の発見.Medical Technology 28:680-682,2000
11) 森徹(監):メディックホームページ.甲状腺疾患の手引き:http://www.medic-grp.co.jp/index.html

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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