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増刊号 顕微鏡検査のコツ―臨床に役立つ形態学 II 微生物検査 各論 2 抗微生物薬の治療効果の判定
2 マラリア
著者: 大友弘士1 赤尾信明1
所属機関: 1東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学分野
ページ範囲:P.977 - P.982
文献購入ページに移動マラリアは,熱帯,亜熱帯地域に広く分布する住血胞子虫亜目に属する熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum),三日熱マラリア原虫(P. vivax),四日熱マラリア原虫(P. malariae)および卵形マラリア原虫(P. ovale)を病因とする急性感染症である.
人類は有史以前からマラリア,特に臨床経過が悪性の熱帯熱マラリアの病苦に悩まされ続けているが,1960年代後半以降は,熱帯地域での流行状況が一挙に悪化し,今日では年間3~5億人が罹患し,200万人が犠牲になっていると推定され,流行地住民の健康と生命を脅かすとともに,甚大な経済損失をもたらしている.加えて,わが国や欧米の非流行地からの熱帯地への旅行者や滞在者が増加するにつれ,現地で病臥したり,帰国後に発症する輸入マラリアが増え死亡例も発生しているなど,今やマラリアは,世界規模の重要な疾患になっている.なお,マラリアは自然界では感染ハマダラカの吸血時に病因原虫が伝播されるが,感染血の輸血,感染母体からの経胎盤感染や汚染注射針の共用による伝播もある.
なお,マラリア診断の基本は現在でも血液薄層ギムザ(Giemsa)染色法本の鏡検による赤血球内無性原虫の検出である.その診断に正確を期するには,マラリア原虫の複雑な生活史を理解し,赤血球内発育環の形態学的特徴に精通しておくことが重要である.
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