icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術37巻10号

2009年09月発行

文献概要

増刊号 顕微鏡検査のコツ―臨床に役立つ形態学 IV 血液像 総論 1 血球の産生と機能

血球の産生と機能

著者: 小山高敏1

所属機関: 1東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科

ページ範囲:P.1056 - P.1064

文献購入ページに移動
1 造血幹細胞(hematopoietic stem cell)

 造血器官が血球を産生して細胞数を一定に保つために,血液細胞分化の段階で成熟を伴わない細胞の増殖が行われている.これを担うのが造血幹細胞で,自己と同じ細胞を産生する自己再生能/自己複製能(self-renewal potential/self-replicate potential)と増殖能(proliferative potential)を有し,同時にすべての系統の血液細胞に分化しうる能力(differentiation potential)をもつ.

 図1に造血幹細胞とその分化について略示するが,最も未分化な造血幹細胞(hematopoietic stem cell,HSC)は,リンパ球も含んだすべての血球に分化しうる全能性(totipotent)である.幹細胞にも段階があり,骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞を多能性幹細胞(multipotent or pluripotent stem cell)と呼ぶ.骨髄系幹細胞からさらに分化した各系統(赤血球系,顆粒球-単球-マクロファージ系,血小板系)に固有な幹細胞は,ある種の血球系統に方向づけられた幹細胞(committed stem cell)であり,単能性幹細胞(monopotent stem cell)ないし前駆細胞(progenitor cellまたはprecursor cell)と呼ぶ.自己再生能は多能性幹細胞になると失われていき,単能性幹細胞ではもはや存在しない.造血幹細胞が自己再生するためにはニッチ(ニッシェ,niche)という特別な環境を必要としており,骨芽細胞がニッチを提供している.造血幹細胞はニッチを離れると分化し,後記のような造血因子に反応して増殖を開始する.

参考文献

1) Lichtman MA, et al (eds):William's Hematology, 7th ed. McGraw-Hill, New York,pp 201-13,2006
2) Greer JP, et al (eds):Wintrobe's Clinical Hematology, 12th ed. Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore,pp 79-105,2009
3) 奈良信雄,小山高敏,他:臨床検査学講座―血液検査学,第2版.医歯薬出版,pp7-13,17-43,2009.
4) 日本検査血液学会(編):スタンダード検査血液学,第2版.医歯薬出版,pp22-55,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?