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文献詳細

雑誌文献

検査と技術37巻10号

2009年09月発行

文献概要

増刊号 顕微鏡検査のコツ―臨床に役立つ形態学 VI 病理 各論

3 炎症

著者: 澤田達男1

所属機関: 1東京女子医科大学医学部第1病理学教室

ページ範囲:P.1241 - P.1244

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はじめに

 生体は原因が何であれ,有害な刺激を受けたときに免疫応答が働く.炎症は生体の微小血管系を反応の場とする生体反応である.古くは,炎症を起こした部分は赤く腫れ(発赤),腫張,かゆみ(疼痛),発熱を伴う病変として知られ,この4徴候は炎症の4徴候と呼ばれ,さらに機能障害を加えて5徴候とされていた.例えば,風邪で鼻が詰まったときを考えるとわかりやすい.炎症の概念は免疫学の進歩とともに大きく変わっているが,炎症は組織傷害に対するさまざまな免疫反応であり,その反応も単純ではなく複雑に絡み合っている.炎症を観察する場合は単に炎症細胞の出現,肉芽組織の形成などの観察にとどまらず,その部分で行われている免疫反応を理解する必要があり,観察には標本内における基本的な病変の理解が必要である.

 循環障害で梗塞が起こっても壊死組織に対しては炎症反応,肉芽組織の形成が起こるし,悪性腫瘍の浸潤部にも炎症反応が起こり,浸潤の有無の決め手になる.また,動脈硬化などの病変にも炎症がその病変の主体となっている.炎症反応は炎症と教科書的に規定されている病変以外にも至るところで起こっている生体に重要な反応であることを理解する必要がある.

 一般的に,古典的な炎症の理解では,急性炎症と慢性炎症に分けられるが,慢性非特異性炎症とされる変化は,ウイルス疾患では初期からこのタイプの炎症所見を示すことが知られており,病理学的な急性,慢性炎症の定義と臨床的診断で用いられる病名としての急性○○炎および慢性○○炎は必ずしも一致しないことを忘れてはならない.

 本稿では一般的な炎症の形態学的変化を述べ,さらに生体の反応としての炎症の観察のポイントを挙げる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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