icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術37巻10号

2009年09月発行

文献概要

増刊号 顕微鏡検査のコツ―臨床に役立つ形態学 VI 病理 各論

4 免疫異常と移植の病理(肝移植を中心に)

著者: 福島万奈1 太田浩良2

所属機関: 1信州大学医学部病態解析診断学 2信州大学医学部保健学科生体情報検査学

ページ範囲:P.1245 - P.1247

文献購入ページに移動
はじめに

 臓器移植は末期臓器不全の治療法の一つであり,移植医療でしばしば問題となるのが免疫にかかわる合併症である.ヒトには各個体特有の細胞表面抗体である主要組織適合性複合体(major histiocompatibility complex,MHC)が存在し,免疫応答により,自己以外の抗原を排除する生体防御のシステムをもっている.通常,他人の臓器を移植すれば拒絶反応が起こり,移植片は脱落・排除される.移植医療では,この拒絶反応を抑えるために,移植後に免疫抑制剤による治療が行われる.一方,現在使用されている免疫抑制剤は,拒絶反応を抑えるだけでなく,宿主の免疫機構を全般的に低下させる.そのため日和見感染症や原疾患の再燃,時に悪性腫瘍の発症を引き起こす.移植後の合併症は免疫と深くかかわっているといえる.

 拒絶反応と感染症では治療法(免疫抑制剤の増減)が全く異なるため,確定診断のために組織生検が行われる.すなわち病理検査は,移植治療において,治療方針決定や治療効果判定のための重要な役割を担っている.

 本稿では,肝移植を例に,免疫にかかわる移植後の合併症としての拒絶反応,感染症,原疾患の再燃の3項目について概説したい.

参考文献

1) 中山 淳,太田浩良,勝山 努,他:肝移植の病理検査.臨床病理48:1022-1028,2000
2) 日本移植学会,日本病理学会(編):ヒト移植臓器拒絶反応の病理組織診断基準 鑑別診断と生検標本の取扱い(図譜) 腎臓移植,肝臓移植,膵臓移植,心臓移植,および肺移植 第2版.金原出版,pp43-64,2009
3) 松本光司:移植病理総論.病理と臨床26:19-24,2008
4) Roitt I, Brostoff J, Male D(著),多田富雄(監訳):免疫学イラストレイテッド 原書第5版.南江堂,pp353-366,2000
5) Banff Working Group:Liver biopsy interpretation for causes of late liver allograft dysfunction. Hepatology44:489-501,2006
6) 伊藤智雄,佐々木彩実,久保田加奈子,他:C型肝炎・肝硬変移植後に注意すべき病理像.病理と臨床26:48-54,2008
7) 羽賀博典,山邉博彦:肝移植の病理,特に生体肝移植の病理.病理と臨床23:272-280,2005
8) 羽賀博典,宮川 文,真鍋俊明:生体肝移植後晩期合併症の病理.病理と臨床26:40-47,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?