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COLUMN―形態検査において知っておきたいこと
ドラムスティック
著者: 海渡健1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学附属病院中央検査部・診療部
ページ範囲:P.1090 - P.1090
文献購入ページに移動 X染色体はY染色体と比較して非常に大きく,含まれる遺伝情報も多量となっているため,男女間の遺伝情報に不公平が生じないよう,2本のX染色体に含まれる遺伝情報のうち一方を不活化することで均一化を図り,膨大な遺伝情報が整理されている.このX染色体のランダムな不活化はライオニゼーション(lyonization)と呼ばれているが,不活化された染色体は消えてなくなるわけではなく,その一部が白血球の核に濃縮され存在している.光顕観察でその濃縮物は,核に1本の糸でつながった太鼓バチ状にみえるため,ドラムスティック(drumstick)と呼ばれている.ドラムスティックは全例で検出されるわけではなく,検出率は2割程度とされているが,これが確認できればその血液が女性由来であることがわかる.区別すべきは男性のY染色体の凝集である偽ドラムスティックで,前者が直径1.2~1.5μmのテニスラケット大とすると後者はゴルフクラブ大となる.また,1本の糸でつながっていることも重要な所見で,核の突起と混同しないことも重要である.おまけのようにみえるドラムスティックだが実は多くの情報が含まれた遺伝子の集合体ということになる.
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