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文献詳細

雑誌文献

検査と技術37巻12号

2009年11月発行

文献概要

トピックス

病態と尿沈渣所見の因果解析

著者: 山西八郎1

所属機関: 1大阪大学医学部附属病院医療技術部検査部門

ページ範囲:P.1421 - P.1423

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はじめに

 Aという原因が基となってBという結果が生じるとき,「AとBの間には因果関係がある」と表現することができる.例えば,年齢と最高血圧の間には,加齢による生理的な動脈硬化が原因となって最高血圧が上昇するという因果関係がある(図1).また,日本人男性サラリーマンを対象とすると,年齢と年収の間にも因果関係が存在している.現在ではこの関係は弱くはなってきているが,基本的にわが国は年功序列社会であるために,年齢が増せば給料も上がるという賃金体系に起因している.

 ここで因果関係を考えるときに大切なことは,何を原因とし何を結果とするのか,つまり因果の方向に妥当性がなければならないということである.先の例で血圧が上がるから年齢も増すと考えることになんら妥当性がないことは言うまでもない.一方,同様に日本人男性サラリーマンを対象とすると,血圧が高いほど年収が多いという正の相関が存在している.しかし,これは年齢を交絡因子とした疑似相関であり,両者の相関性には実質的な意味はない.また,血圧を原因と考えること自体にもなんら妥当性はない.しかし見かけの相関性であっても“血圧”と“年収”の間には“年齢”を介した因果関係があるのは事実である.

 本稿のテーマである因果解析では疑似相関も含めた変数間の相関関係を一つの因果モデルとして仮定し,因果の方向とその強さを定量的に解釈することを目的としている.因果解析は主として社会科学の分野で活用されている多変量解析法であるが,新しい試みとしてこれを検査診断学の分野に応用することにより1,2),病態と尿沈渣所見,特に円柱の検出を説明できる因果モデルを構築した.

参考文献

1) Yamanishi H, Kimura S, Hata N, et al:Evaluation of a model of latent pathologic factors in relation to serum ferritin elevation. Clin Biochem 40:359-364, 2007
2) 山西八郎,堀田真希,林貞夫,他:高フェリチン血症をモデルとした構造方程式モデリングによる潜在的病態因子の抽出と因果解析.臨床病理 57:17-23,2009
3) 小島隆矢:Excelで学ぶ共分散構造分析とグラフィカルモデリング.オーム社,2003
4) 朝野煕彦,鈴木督久,小島隆矢:入門共分散構造分析の実際.講談社サイエンティフィク,2005
5) 上田尚彦,今井宣子:尿沈渣 標本の作製から診断まで.診断と治療社,1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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