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病態と尿沈渣所見の因果解析
著者: 山西八郎1
所属機関: 1大阪大学医学部附属病院医療技術部検査部門
ページ範囲:P.1421 - P.1423
文献購入ページに移動Aという原因が基となってBという結果が生じるとき,「AとBの間には因果関係がある」と表現することができる.例えば,年齢と最高血圧の間には,加齢による生理的な動脈硬化が原因となって最高血圧が上昇するという因果関係がある(図1).また,日本人男性サラリーマンを対象とすると,年齢と年収の間にも因果関係が存在している.現在ではこの関係は弱くはなってきているが,基本的にわが国は年功序列社会であるために,年齢が増せば給料も上がるという賃金体系に起因している.
ここで因果関係を考えるときに大切なことは,何を原因とし何を結果とするのか,つまり因果の方向に妥当性がなければならないということである.先の例で血圧が上がるから年齢も増すと考えることになんら妥当性がないことは言うまでもない.一方,同様に日本人男性サラリーマンを対象とすると,血圧が高いほど年収が多いという正の相関が存在している.しかし,これは年齢を交絡因子とした疑似相関であり,両者の相関性には実質的な意味はない.また,血圧を原因と考えること自体にもなんら妥当性はない.しかし見かけの相関性であっても“血圧”と“年収”の間には“年齢”を介した因果関係があるのは事実である.
本稿のテーマである因果解析では疑似相関も含めた変数間の相関関係を一つの因果モデルとして仮定し,因果の方向とその強さを定量的に解釈することを目的としている.因果解析は主として社会科学の分野で活用されている多変量解析法であるが,新しい試みとしてこれを検査診断学の分野に応用することにより1,2),病態と尿沈渣所見,特に円柱の検出を説明できる因果モデルを構築した.
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