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文献詳細

雑誌文献

検査と技術37巻13号

2009年12月発行

文献概要

病気のはなし

アルコール依存症

著者: 樋口進1

所属機関: 1独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター

ページ範囲:P.1430 - P.1436

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サマリー

 アルコール依存症(以下,ア症)は,強い飲酒欲求,飲酒のコントロール障害,離脱症状などの特徴をもった精神疾患である.治療の必要なア症患者はわが国に80万人,またア症の疑いは440万人程度存在すると推定されている.ア症は,肝障害,うつ病など60以上もの健康問題を引き起こしているだけでなく,飲酒運転,経済的損失などの社会問題の原因となっている.診断にはICD-10の診断ガイドラインが使用される.診断の補助として,γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-glutamyl transpeptidase,GGT)などの生化学マーカーや質問紙スクリーニングテストなどが使用されることがある.ア症は一度断酒していても,再飲酒により速やかにコントロールを逸した元の状態に戻ってしまう.そのため,治療の目標は断酒の達成と継続である.治療は専門医療機関が推奨される.

参考文献

1) 樋口進:アルコール依存―生物学的背景.松下正明,加藤敏,神庭重信(編):精神医学対話.弘文堂,pp855-871,2008
2) 尾崎米厚,松下幸生,白坂知信,他:わが国の成人飲酒行動およびアルコール症に関する全国調査.アルコール研究と薬物依存 40:455-470,2005
3) 樋口進:アルコール依存症の病態と治療に関する研究.厚生労働科学研究「精神障害者の地域ケアの促進に関する研究(主任研究者:宮岡等)」2007年度報告書,2008
4) 樋口進(編),樋口進,遠藤太久郎,白坂知信,他(著):アルコール保健指導マニュアル.社会保険研究所,2003
5) 白倉克之,樋口進,和田清(編):アルコール・薬物関連障害の診断・治療ガイドライン.じほう,2002
6) 中山寿一,樋口進,神奈川県警察本部交通部交通総務課:飲酒と運転に関する調査―久里浜アルコール症センターと神奈川県警察との共同研究.http://www.kurihama-alcoholism-center.jp/
7) Montalto NJ, Bean P:Use of contemporary biomarkers in the detection of chronic alcohol use. Med Sci Monit 9:285-290,2003
8) Yokoyama A, Yokoyama T, Muramatsu T, et al:Macrocytosis, a new predictor of esophageal squamous cell carcinoma in Japanese alcoholic men. Carcinogenesis 24:1773-1778,2003
9) 樋口進,尾崎米厚,松下幸生,他:新しい男性版(KAST-M)および女性版(KAST-F)アルコール依存症スクリーニングテスト開発の試み.日本アルコール・薬物医学会雑誌 42:328-329,2007
10) 松下幸生,樋口進:精神疾患の寛解とは何か―アルコール依存.精神科(印刷中)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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