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文献詳細

雑誌文献

検査と技術37巻3号

2009年03月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈微生物〉

梅毒検査の現状と今後

著者: 松本美枝1

所属機関: 1積水メディカル株式会社 カスタマーサポートセンター 情報・学術グループ

ページ範囲:P.278 - P.281

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はじめに

 梅毒は,トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum subsp. pallidum, Nichols strain)(以下,TPと略す)の感染による慢性の全身性の性感染症である.

 現在行われている梅毒血清反応検査は,2種類の抗原系を用いる方法に大別される.一方はTP由来成分を抗原として用いるTP抗原法で,FTA-ABS(fluorescent treponemal antibody - absorption test)法,TPHA(Treponema pallidum hemagglutination assay)法などがある.他方はカルジオライピン,レシチンのリン脂質を抗原とする脂質抗原法で,通常STS(serologic test for syphilis)法と呼ばれている.STS法にはガラス板法,RPR(rapid plasma reagin)カード法などがある.

 これらの検査法は,1900年初頭のワッセルマン(Wassermann)法に端を発し,梅毒患者の診断や治療に活用されてきた.1990年代には蛋白質精製技術や遺伝子工学技術の向上とともに,分析装置の開発が進み,感度や特異性に優れた自動化が可能な検査法が多数開発された.

 現在,梅毒検査は,献血時や手術前,妊婦検診など,一般健常者に対するスクリーニングとして,また,梅毒と診断された患者の病期の判定や治療効果を確認するために実施されている.わが国では,前者のようなスクリーニング検査が全検査の大半を占めると言われている.

 さらに近年,臨床症状がみられない無症候梅毒が増加しており1),血清反応の重要性がさらに増している.

 本稿では,現在利用されている梅毒検査法の特徴について論じ,今後の検査法のあり方について考察したい.

参考文献

1) 岡部信彦,多田有希:感染症発生動向調査から見たわが国のSTDの動向.厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)「性感染症の効果的な蔓延防止に関する研究班」分担研究報告書,pp29-43,2007
2) 大里和久,永尾朝江,犬角紀代美,他:ラテックス凝集法による抗梅毒脂質抗体測定用試薬及び抗TP抗体測定用試薬の臨床的評価.日本性感染症学会誌 13:124-130,2002
3) 大里和久:梅毒.総合臨床 52:1132-1137,2003
4) 津上久弥:梅毒血清検査反応と治癒判定の問題.皮膚 24:11-18,1982
5) 川井和久,大里和久:メディエースRPR,TPLAを用いた梅毒病期の判別可能性について.医療と検査機器・試薬 26:301-304,2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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