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尿中肺炎球菌と尿中レジオネラの検査
著者: 村上日奈子1 舘田一博12
所属機関: 1東邦大学医療センター大森病院臨床検査部 2東邦大学医学部微生物学・感染症学講座
ページ範囲:P.300 - P.302
文献購入ページに移動尿中肺炎球菌と尿中レジオネラの検査で,このタイミングでとると陽性に出やすい,感染していてもこの時期を逃すと陰性に出るなど,尿採取のタイミングに関する注意があれば教えてください.(大分 F.S.生)
A.村上日奈子・舘田一博
はじめに
呼吸器感染症は頻度の高い疾患の一つであり,なかでも肺炎球菌性肺炎とレジオネラ肺炎は重症肺炎として代表的な疾患です.肺炎球菌は小児から高齢者まで多く検出されており,市中肺炎の起因菌として最も頻度の高い細菌で,欧米による疫学調査では20~40%が肺炎球菌性肺炎であったことを報告しています1).
一方,レジオネラは市中感染のみならず病院内感染(施設内感染)を起こし,循環式風呂や温泉などにおいて本菌に汚染されたエアロゾルを吸入することが感染の原因となります.レジャー温泉施設などでの集団感染事例などもみられており2),なかでも原因菌としてLegionella pneumophila血清群1によるものが最も頻度が高く重要であり,易感染性患者,高齢者や喫煙者に多くみられ基礎疾患がある患者の死亡率は20~30%と高いと言われています.
感染症の検査では培養法がゴールドスタンダード(基準とすべき最も確立された検査法)ですが,同定結果が出るまで時間を要し,特にレジオネラの培養においては1週間~10日間程度かかる場合もあります.
肺炎球菌やレジオネラに代表されるような重症肺炎では症状が急速に悪化し,しばしば致命的になるため迅速診断が極めて重要となります.近年,重症肺炎の原因として重要な肺炎球菌とレジオネラに対する尿中抗原検出キットが開発され迅速診断に役立っています.
参考文献
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