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病院排水処理の実態とそのリスク
著者: 森宏一郎1
所属機関: 1日本医師会総合政策研究機構(日医総研)
ページ範囲:P.306 - P.307
文献購入ページに移動院内感染のリスクは常に存在し,ひとたび事件が起きれば人命にかかわるため重大な問題となる.そのため,院内感染対策への関心は高い.したがって,感染性医療廃棄物の適切処理についての関心は高い.ところが,病院排水についての関心は非常に低いのが現状である.それにはいくつか理由がある.
①院内感染対策では病院内の事情に目が向くため,外に出て行くものには注意が払われにくい.
②病院排水処理システムは病院の医業収入に直結するものではなく,コスト要因に過ぎない.
③病院排水を個別的に対象とした排水規制が存在しない.
④適切な排水処理を促進するための政策的誘導(補助金など)は与えられていない.
⑤病院排水に起因するなんらかの問題が起きたとしても,その因果関係は非常にわかりにくい.
しかし,病院排水には,いくつかの環境リスクがあることが報告されている.病院排水について次の三つの問題がある1).
(1)殺菌処理されていない排水には,多種多様な病原体(病原菌・病原ウイルス)が含まれており,病原体の感染リスク・伝播リスクがあること.
(2)病院排水にも重金属類などが含まれており,ほかの産業排水と同様に,水質汚染リスクがあること.
(3)薬品系排水(特に,抗生物質を含む排水)が放流されることによって,環境中で耐性菌が生み出されるリスクがあること2).
このように,時と場合によっては重大なリスクと考えるべきものがあると考えられる.しかし,わが国の病院排水処理の実態はほとんど知られていない.そこで,本稿では検査排水を含む感染系排水に焦点を当てながら,わが国における病医排水処理の実態を紹介する.
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