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悪性中皮腫と卵巣癌との腹水細胞診における鑑別
著者: 濱川真治1 柏崎好美1 森一磨1 清水誠一郎23
所属機関: 1公立昭和病院臨床検査科 2公立昭和病院病理診断科 3公立昭和病院中央検査部
ページ範囲:P.758 - P.760
文献購入ページに移動中皮腫は胸腔や腹腔,心囊,精巣鞘膜の体腔内面を広く覆う獎膜に発生する予後不良な悪性腫瘍であり,腹腔中皮腫は全中皮腫の約20%程度と言われている.中皮腫の診断は,アスベスト曝露の既往問診から始まり,鑑別抗体パネルによる免疫組織化学染色を加えた病理組織診断まで,総合的に判断される.そのなかで体腔液貯留のみの初期病変の状態で中皮腫を発見することが肝要であり,体腔液細胞診は重要な役割を担っている.
一方で卵巣癌は婦人科癌のうちで最も死亡率が高い.その原因は早期発見が難しく,60~70%は進行癌で発見されることにある.しかし,中皮腫に比べ卵巣癌は化学療法に感受性を有し,手術療法や放射線療法などを併用し治療することで完全寛解を得て,長期生存も期待できる.したがって,腹膜中皮腫と卵巣癌の細胞学的鑑別は,治療および予後の観点からも重要であることに異論はない.
体腔液に出現する悪性細胞の80%以上は腺癌細胞であるが,中皮腫細胞の異型が強い場合,胸水では肺癌や乳癌など,腹水では卵巣癌(特に漿液性腺癌)や消化器癌との形態学的鑑別に苦慮することもある.また,細胞異型が弱い中皮腫の場合,“反応性中皮細胞”との鑑別が難しいこともある.これら中皮腫細胞鑑別が困難なことの背景には,中皮腫細胞の多彩な出現パターンあるいは多様な細胞像が存在すると考えられる.
そこで本稿では,体腔液細胞診における中皮腫と卵巣漿液性腺癌の細胞学的鑑別,および鑑別抗体パネルによる免疫組織化学染色の有用性とピットフォールについて症例を呈示して解説する.
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