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臨床医からの質問に答える
唾液中コルチゾール測定はクッシング症候群の診断に有用か?
著者: 櫛引美穂子1 崎原哲2 保嶋実3
所属機関: 1弘前大学医学部附属病院検査部 2弘前大学大学院医学研究科内分泌代謝内科学 3弘前大学医学部臨床検査医学講座
ページ範囲:P.766 - P.768
文献購入ページに移動クッシング症候群(Cushing's syndrome,CS)はコルチゾール(compound F)の慢性的な過剰状態により,高血圧,高血糖,脂質代謝異常,骨代謝異常,免疫能低下などさまざまな障害が引き起こされる症候群である.本症候群は,高コルチゾール血症の原因により,副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone,ACTH)依存性CSと非依存性CSに大別される.ACTH依存性CSには,下垂体のACTH産生腺腫が原因のクッシング病(Cushing's disease,CD)と異所性ACTH産生腫瘍が含まれ,ACTH非依存性CSは,大部分がコルチゾール産生副腎腺腫で,副腎性CS(adrenal Cushing's syndrome,AdCS)と呼ばれる.
CSは,無治療では予後不良の疾患である.1950年代の報告には,治療されていないCDの多くが重篤な血管障害(心筋梗塞,脳梗塞など)や感染症を併発し,平均余命5年未満,5生率50%だったと記されている1).
最近は,外科的・内科的治療介入によりCSの予後は著しく改善しているが,ACTH依存性CSの場合は,依然上記のような合併症が致命的な状態まで進行している症例が存在する.CDも異所性ACTH産生腫瘍も外科的に腫瘍の完全摘出が困難な場合が多く,有効な内科的治療法も確立されていない現状では,腫瘍が残存した場合は,コルチゾールのコントロールができなくなることが原因の一つである.また,診断に必要な検査が煩雑なため,患者側からも医療者側からも精査が敬遠され,診断と治療の開始が遅れることも一因になっている可能性がある.
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