icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術38巻10号

2010年09月発行

文献概要

増刊号 免疫反応と臨床検査2010 II 自己免疫

5 IgG4関連疾患の検査

著者: 川茂幸1 浜野英明2 伊藤哲也2 尾崎弥生2 新倉則和2

所属機関: 1信州大学総合健康安全センター 2信州大学医学部消化器内科

ページ範囲:P.828 - P.831

文献購入ページに移動
IgG4関連疾患とは

 IgG4関連疾患(IgG4-related disease)は,①血清IgG4上昇,②病変局所にIgG4陽性形質細胞の著明な浸潤によって特徴づけられる全身性疾患であり,新しい疾患概念である.しかし,診断基準については厚生労働省の研究班などで現在検討中であり,いまだ明確なものはない.本疾患は従来,自己免疫性膵炎の膵外病変,Mikulicz病の腺外病変の検索過程でその存在が明らかになってきた1~3)

 自己免疫性膵炎は高齢男性に好発し,膵腫大,膵管狭細像,閉塞性黄疸を呈し,膵癌との鑑別困難例が存在する4).免疫グロブリン上昇,各種自己抗体陽性,病変局所に著明なリンパ球,形質細胞浸潤,ステロイド治療が奏効することより,発症に免疫学的機序の関与が考えられてきた.しかし,詳細な機序についてはいまだ不明である.本症では血清IgG4が特異的,高率に上昇し,診断ならびに膵癌との鑑別,経過観察に有用である4).自己免疫性膵炎のもう一つの特徴は,涙腺・唾液腺炎,硬化性胆管炎,後腹膜線維症など,全身に及ぶ多彩な膵外病変を合併することである(表).自己免疫性膵炎の病変局所には,リンパ球形質細胞浸潤,閉塞性静脈炎,花筵状線維化を認め,lympho-plasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)と呼称される5).また,IgG4陽性形質細胞の著明な浸潤も認められる4).これら自己免疫性膵炎病変局所で認められる病理所見は膵外病変組織にも認められ,同様の病態が背景に存在すると考えられる.そして,これらを包括する全身性疾患,multifocal idiopathic fibrosclerosis,IgG4-related sclerosing diseaseなどの疾患概念が提唱されてきた.

参考文献

1) 川茂幸,川野充弘(編):IgG4関連疾患への誘い―IgG4研究会モノグラフ.前田書店,2010
2) 山本元久,高橋裕樹,苗代康可,他:ミクリッツ病と全身性IgG4関連疾患.Jpn J Clin Immunol31:1-8,2008
3) 川茂幸,浜野英明:自己免疫性膵炎.BIO Clinica21:44-48,2006
4) 川茂幸:自己免疫性膵炎とIgG4.日消会誌102:296-302,2005
5) Kawaguchi K, Koike M, Tsuruta K, et al:Lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis with cholangitis;A variant of primary sclerosing cholangitis extensively involving pancreas. Hum Pathol22:387-395,1991
6) 西森功:血液検査.岡崎和一,川茂幸,神澤輝実(編):自己免疫性膵炎―病態から診断・治療まで.診断と治療社,pp87-91,2009
7) Kawa S, Hamano H:Clinical features of autoimmune pancreatitis. J Gastroenterol42(Suppl18):9-14,2007
8) 伊藤鉄英:膵内外分泌機能.岡崎和一,川茂幸,神澤輝実,(編):自己免疫性膵炎―病態から診断・治療まで.診断と治療社,pp92-97,2009
9) Taguchi M, Kihara Y, Nagashio Y, et al:Decreased production of immunoglobulin M and A in autoimmune pancreatitis. J Gastroenterol44:1133-1139,2009
10) 川茂幸:自己免疫性膵炎の免疫異常.日消会誌105:494-501,2008
11) Frulloni L, Lunardi C, Simone R, et al:Identification of a novel antibody associated with autoimmune pancreatitis. N Engl J Med361:2135-2142,2009
12) Hamano H, Kawa S, Horiuchi A, et al:High serum IgG4 concentrations in patients with sclerosing pancreatitis. N Engl J Med344:732-738,2001
13) Hamano H, Kawa S, Ochi Y, et al:Hydronephrosis associated with retroperitoneal fibrosis and sclerosing pancreatitis. Lancet359:1403-1404,2002
14) 岡崎和一,川茂幸,神澤輝実,他:自己免疫性膵炎診療ガイドライン2009.膵臓24:1-54,2009
15) 川茂幸,伊東理子,山本洋,他:呼吸器病変.岡崎和一,川茂幸,神澤輝実(編):自己免疫性膵炎―病態から診断・治療まで.診断と治療社,pp128-131,2009
16) 川茂幸:その他の膵外病変―甲状腺機能低下症,下垂体炎,前立腺炎,血小板減少性紫斑病.岡崎和一,川茂幸,神澤輝実(編):自己免疫性膵炎―病態から診断・治療まで.診断と治療社,pp142-145,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?