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増刊号 免疫反応と臨床検査2010 II 自己免疫
5 IgG4関連疾患の検査
著者: 川茂幸1 浜野英明2 伊藤哲也2 尾崎弥生2 新倉則和2
所属機関: 1信州大学総合健康安全センター 2信州大学医学部消化器内科
ページ範囲:P.828 - P.831
文献購入ページに移動IgG4関連疾患(IgG4-related disease)は,①血清IgG4上昇,②病変局所にIgG4陽性形質細胞の著明な浸潤によって特徴づけられる全身性疾患であり,新しい疾患概念である.しかし,診断基準については厚生労働省の研究班などで現在検討中であり,いまだ明確なものはない.本疾患は従来,自己免疫性膵炎の膵外病変,Mikulicz病の腺外病変の検索過程でその存在が明らかになってきた1~3).
自己免疫性膵炎は高齢男性に好発し,膵腫大,膵管狭細像,閉塞性黄疸を呈し,膵癌との鑑別困難例が存在する4).免疫グロブリン上昇,各種自己抗体陽性,病変局所に著明なリンパ球,形質細胞浸潤,ステロイド治療が奏効することより,発症に免疫学的機序の関与が考えられてきた.しかし,詳細な機序についてはいまだ不明である.本症では血清IgG4が特異的,高率に上昇し,診断ならびに膵癌との鑑別,経過観察に有用である4).自己免疫性膵炎のもう一つの特徴は,涙腺・唾液腺炎,硬化性胆管炎,後腹膜線維症など,全身に及ぶ多彩な膵外病変を合併することである(表).自己免疫性膵炎の病変局所には,リンパ球形質細胞浸潤,閉塞性静脈炎,花筵状線維化を認め,lympho-plasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)と呼称される5).また,IgG4陽性形質細胞の著明な浸潤も認められる4).これら自己免疫性膵炎病変局所で認められる病理所見は膵外病変組織にも認められ,同様の病態が背景に存在すると考えられる.そして,これらを包括する全身性疾患,multifocal idiopathic fibrosclerosis,IgG4-related sclerosing diseaseなどの疾患概念が提唱されてきた.
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