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文献詳細

雑誌文献

検査と技術38巻10号

2010年09月発行

文献概要

増刊号 免疫反応と臨床検査2010 II 自己免疫

6 自己免疫性溶血性貧血の検査

著者: 伊藤良和1 須永和代2 大屋敷一馬1

所属機関: 1東京医科大学血液内科 2東京医科大学病院中央検査部

ページ範囲:P.832 - P.836

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自己免疫性溶血性貧血とは

 溶血性貧血とは,さまざまな原因により赤血球寿命が短縮した状態を指す.通常,骨髄の赤芽球造血は亢進するが,これよりも赤血球破壊の程度が上回ると貧血を呈する.貧血は正球性正色素性貧血であるが,末梢血中に増加した網赤血球により平均赤血球容積(mean corpuscular volume,MCV)がやや高値となることがある.赤血球破壊の場所により血管内溶血と血管外溶血に分類される.血管外溶血では網内系マクロファージが赤血球を貪食するが,破壊された赤血球中のヘモグロビンは分解されてヘムからビリルビンとなり,アルブミンと結合して血液中で増加するために黄疸となる.これを間接ビリルビンと呼ぶが,肝臓でグルクロン酸抱合を受け,抱合型ビリルビンとなり,胆汁から排泄される.赤血球中には乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase,LDH)アイソザイムの1,2型が多量に含まれているため,溶血により血液中でLDH高値になる.赤血球から遊離したヘモグロビンは有毒であり,腎機能障害を起こす.ハプトグロビンは,ヘモグロビンと結合し,毒性を軽減する働きがあり,末梢血液中で消費され低下する.

 広義の自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia,AIHA)では,赤血球膜上の抗原に反応する自己抗体が産生され,その抗体が赤血球膜上に結合する.赤血球に結合する自己抗体や補体を検出するのが,抗ヒトグロブリン試験(Coombs試験)である.抗体は作動域が37°Cの温式抗体と4°Cの冷式抗体があり,この違いにより疾患が分類される(表1).狭義のAIHAは温式抗体によるAIHA(以下,温式AIHA)を指し,AIHAの約90%,溶血性貧血全体の約47%を占める1).発症のピークは小児,若年(20歳台),老年層(70歳台)にみられ,若年者では女性が多い.特発性と続発性があり,基礎疾患には自己免疫疾患,リンパ増殖性疾患,免疫不全症,骨髄増殖性疾患,ウイルス感染などがある.冷式抗体によるAIHAは寒冷凝集素症(cold agglutinin disease,CAD)と発作性寒冷ヘモグロビン尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria,PCH)に分類される.温式抗体と冷式抗体が同時に検出される混合型もある.CADでは特発性が成人に多く,続発性は小児と若年に多い.基礎疾患にはマイコプラズマ肺炎,ウイルス感染症,リンパ増殖症などがある.PCHは特発性と続発性(小児のウイルス感染後など)があるが,後者が多い.

参考文献

1) 小峰光博:自己免疫性溶血性貧血診療の参照ガイド.特発性造血障害に関する調査研究班:平成14~16年度総合研究報告書,pp75-94,2005
2) 亀崎豊実,梶井英治:Coombs試験,寒冷凝集素などの赤血球抗体検査の読み方.血液・腫瘍科 59:258-265,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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