文献詳細
文献概要
増刊号 免疫反応と臨床検査2010 III 輸血
3 妊娠と輸血関連検査
著者: 川畑絹代1 大戸斉1
所属機関: 1福島県立医科大学輸血・移植免疫部
ページ範囲:P.857 - P.860
文献購入ページに移動血液型不適合妊娠
妊娠した女性の体内には,胎児という自分とは異なる父親由来の抗原を保有する個体が存在する.自分と異なる血液抗原が母体に曝露されると,母体は時にそれに対する抗体を産生し,排除しようとする免疫反応が起きる.これが血液型不適合妊娠の基本的機序である.母親血と胎児血は胎盤によって隔てられているが,実際には高頻度で少量の胎児血液が母体循環に流入している1).母児間輸血(feto-maternal transfusion,FMT)と呼ばれ,母体感作の大きな原因と考えられている.妊娠や輸血によって母体内で産生されたIgG型の抗体は胎盤を通過し,対応抗原を有する胎児血球と結合する.抗体が結合した胎児血球は胎児の単球貪食系で捕捉・破壊され,血球成分の減少と破壊に伴う影響が出現する.破壊される血球成分としては,赤血球,白血球,血小板があり,胎児新生児溶血性疾患(hemolytic disease of the fetus and the newborn,HDFN),新生児同種免疫性顆粒球減少症(neonatal alloimmune neutropenia,NAIN),新生児同種免疫性血小板減少症(neonatal alloimmune thrombocytopenia,NAIT)と呼ばれる.
本稿では,胎児新生児溶血性疾患と関連検査について解説する.
妊娠した女性の体内には,胎児という自分とは異なる父親由来の抗原を保有する個体が存在する.自分と異なる血液抗原が母体に曝露されると,母体は時にそれに対する抗体を産生し,排除しようとする免疫反応が起きる.これが血液型不適合妊娠の基本的機序である.母親血と胎児血は胎盤によって隔てられているが,実際には高頻度で少量の胎児血液が母体循環に流入している1).母児間輸血(feto-maternal transfusion,FMT)と呼ばれ,母体感作の大きな原因と考えられている.妊娠や輸血によって母体内で産生されたIgG型の抗体は胎盤を通過し,対応抗原を有する胎児血球と結合する.抗体が結合した胎児血球は胎児の単球貪食系で捕捉・破壊され,血球成分の減少と破壊に伴う影響が出現する.破壊される血球成分としては,赤血球,白血球,血小板があり,胎児新生児溶血性疾患(hemolytic disease of the fetus and the newborn,HDFN),新生児同種免疫性顆粒球減少症(neonatal alloimmune neutropenia,NAIN),新生児同種免疫性血小板減少症(neonatal alloimmune thrombocytopenia,NAIT)と呼ばれる.
本稿では,胎児新生児溶血性疾患と関連検査について解説する.
参考文献
1) Ariga H, Ohto H, Busch MP, et al:Kinetics of fetal cellular and cell-free DNA in maternal circulation in pregnancy and after delivery. Transfusion41:1524-1530,2001
2) 厚生省特発性造血障害調査研究班報告:ABO不適合による新生児溶血性疾患の診断基準,1992
3) 安田広康,大戸斉:妊娠と輸血関連検査.臨床検査53:433-439,2009
4) 大戸斉:新生児溶血性疾患と母児免疫.遠山博,柴田洋一,大戸斉(編):輸血学,改訂第3版.中外医学社,pp512,2004
5) Yasuda H, Nollet K, Ohto H:A review of hemolytic disease of the fetus and newborn due to MN incompatibility in Japan. Vox Sanguins97(Suppl1):125,2009
掲載誌情報