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文献詳細

雑誌文献

検査と技術38巻10号

2010年09月発行

文献概要

増刊号 免疫反応と臨床検査2010 V 生化学 F 線維化マーカー

2 肝の線維化マーカー

著者: 池田均1

所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科臨床病態検査医学

ページ範囲:P.931 - P.934

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 肝臓に障害を与える原因は,ウイルス,アルコール,薬剤,過栄養,自己免疫機序など多岐にわたるが,原因のいかんにかかわらず障害が継続(慢性化)すると,これに対する創傷治癒機転が持続するため,肝臓には線維成分が沈着し線維化をきたす.線維化が高度に及ぶと肝硬変症となり,肝機能の低下,門脈圧亢進症などにより予後不良の病態となる.すなわち,線維化は肝障害が継続する慢性肝臓病の主要な病態であり,その程度の把握は診療上重要である.また,わが国で慢性肝臓病の原因として最も頻度の高いC型肝炎においては,昨今インターフェロンと抗ウイルス薬の組み合わせでウイルスを排除し,完治を目指すことが可能となってきたが,一般に線維化が進んだ症例では治療効果が低いことが明らかとなっている.したがって,C型肝炎の治療効果を推定するためにも線維化の診断は重要となっている.

 肝臓の線維化を診断するためには,まず肝生検による組織診断が最も信頼性の高い検査法とされてきた.しかしながら,生検を行うには入院を必要とするうえに,腹腔内出血などの重篤な合併症のリスクがあるため患者の負担が大きい.また,採取する組織が小さいため肝臓全体の変化を必ずしも示していない可能性があり,組織を観察する検者による診断の偏りの問題も指摘されている.侵襲性を考慮すると,当然ながら何度も検査を行うことは難しい.このような組織診断の欠点を克服するため,血液中の物質を測定することにより肝線維化の診断が可能となるマーカーが探索されてきた.

参考文献

1) Manning DS, Afdhal NH:Diagnosis and quantitation of fibrosis. Gastroenterology134:1670-1681,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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