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増刊号 免疫反応と臨床検査2010 VI 血液 B 血栓・止血関連マーカー
2 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)抗体検査
著者: 和中敬子1 松尾美也子2
所属機関: 1血栓止血研究神戸プロジェクト 2兵庫県立がんセンター
ページ範囲:P.956 - P.958
文献購入ページに移動ヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia,HIT)は,ヘパリンの重大な副作用の一つであり,血小板減少(通常ヘパリン投与開始5日目以降にヘパリン使用前値の50%以下または10万/μl以下に減少)としばしば血栓症を合併し,重篤化する症例がみられる.その発症の原因がHIT抗体の産生である.
HIT抗体は主としてヘパリンと血小板第4因子(platelet factor 4,PF4)の複合体に対する抗体である(IL-8やNAP-2に対する抗体によるHITの発症例の報告もあるが稀である).PF4は血小板のα顆粒に存在するヘパリン中和物質で,ヘパリンと結合するとその立体構造に変化が起こり,これを新生抗原として抗体(HIT抗体)が産生される.産生されたHIT抗体は,PF4/ヘパリン複合体と免疫複合体を形成し,血小板膜上のFcγIIAレセプターに結合して血小板を活性化し,血小板減少を引き起こす.また,活性化された血小板からはマイクロパーティクルが放出され,凝固系が活性化される1).さらに,HIT抗体は血管内皮細胞や単球を活性化し,組織因子を介して凝固系が活性化され,最終的にトロンビンが産生されて血栓症が誘発される.したがって,HIT診断の基準は,①臨床的症状(血小板減少症あるいは血栓症の合併)と,②HIT抗体の検出である.
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