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文献詳細

雑誌文献

検査と技術38巻10号

2010年09月発行

文献概要

増刊号 免疫反応と臨床検査2010 VI 血液 B 血栓・止血関連マーカー

2 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)抗体検査

著者: 和中敬子1 松尾美也子2

所属機関: 1血栓止血研究神戸プロジェクト 2兵庫県立がんセンター

ページ範囲:P.956 - P.958

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HIT抗体とは

 ヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia,HIT)は,ヘパリンの重大な副作用の一つであり,血小板減少(通常ヘパリン投与開始5日目以降にヘパリン使用前値の50%以下または10万/μl以下に減少)としばしば血栓症を合併し,重篤化する症例がみられる.その発症の原因がHIT抗体の産生である.

 HIT抗体は主としてヘパリンと血小板第4因子(platelet factor 4,PF4)の複合体に対する抗体である(IL-8やNAP-2に対する抗体によるHITの発症例の報告もあるが稀である).PF4は血小板のα顆粒に存在するヘパリン中和物質で,ヘパリンと結合するとその立体構造に変化が起こり,これを新生抗原として抗体(HIT抗体)が産生される.産生されたHIT抗体は,PF4/ヘパリン複合体と免疫複合体を形成し,血小板膜上のFcγIIAレセプターに結合して血小板を活性化し,血小板減少を引き起こす.また,活性化された血小板からはマイクロパーティクルが放出され,凝固系が活性化される1).さらに,HIT抗体は血管内皮細胞や単球を活性化し,組織因子を介して凝固系が活性化され,最終的にトロンビンが産生されて血栓症が誘発される.したがって,HIT診断の基準は,①臨床的症状(血小板減少症あるいは血栓症の合併)と,②HIT抗体の検出である.

参考文献

1) 和中敬子,岡本歌子:ヘパリン起因性血小板減少症.臨床麻酔29:1497-1504,2005
2) 松尾武文,和中敬子,浅田玲子:ヘパリン起因性血小板減少症―病因,検査,治療.臨床病理53:622-629,2005
3) 浅田玲子,和中敬子,松尾美也子,他:ヘパリン起因性血小板減少症におけるヘパリン惹起血小板凝集試験に用いる健常人ドナー多血小板血漿選択のための指標.日本検査血液学会雑誌7:32-37,2006
4) 宮田茂樹,山本晴子:Heparin-induced thrombocytopenia(HIT)―診断と治療,最近の進歩.高久史麿,溝口秀昭,坂田洋一,他(編):Annual Review 血液 2008.中外医学社,pp199-210,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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