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HPVワクチンによる子宮頸癌予防と治療
著者: 川名敬1
所属機関: 1東京大学医学部産科婦人科
ページ範囲:P.877 - P.877
文献購入ページに移動 子宮頸癌は,近年20~30歳代の女性の癌では罹患者数が1位であり,かつ急増している.子宮頸癌の原因は,ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus,HPV)であり,そのHPVは性交経験者なら誰でも感染している.今年から使用できるようになったHPVワクチンは,ウイルスと類似した粒子状のウイルス蛋白質を抗原にしたワクチンで,血清中に誘導されたIgG抗体が子宮頸部粘膜に漏出して,中和効果を発揮する.高悪性度のHPV16,18型の感染を予防することから,子宮頸癌の約70%は予防できると期待される.がん検診と組み合わせることによって子宮頸癌は100%予防しうる.ワクチン接種の優先対象者は,性交未経験者である11~14歳の学童女子であり,予防効果の確実性が高い.一方,成人女性は誰でもいずれかのHPVに感染しているが,もしそれがHPV16,18型であれば,予防ワクチンを接種する意味がない.がん検診で癌を早期発見することになる.子宮頸癌の前癌病変は,HPVの癌蛋白質を発現しているので,それに対する細胞傷害性T細胞を誘導するワクチンがHPV治療ワクチンである.前癌病変の初の治療薬になるかもしれない.子宮頸癌は,ウイルス発癌であるがゆえに,ワクチンで予防や治療が現実的なものとなっているのだ.
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