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文献詳細

雑誌文献

検査と技術38巻10号

2010年09月発行

文献概要

column

Helicobacter pylori感染とサイトカイン

著者: 山岡吉生1

所属機関: 1大分大学医学部環境・予防医学

ページ範囲:P.883 - P.883

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 H. pylori感染胃粘膜では,好中球浸潤が特徴的で,好中球遊走作用のあるインターロイキン-8(interleukin-8,IL-8)の産生が著明です.そのため,IL-8産生能のあるH. pyloriの病原因子を探す研究が進められてきました.最初に報告されたIL-8産生因子はcytotoxin associated gene product(CagA)と呼ばれ,cag pathogenicity island(PAI)と呼ばれる30ほどの遺伝子群の端に遺伝子が存在します.cag PAI産物は注射器のような構造をしており,CagAを細胞内に注入する作用があります.注入されたCagAは細胞内シグナル伝達を撹乱してさまざまな変化をもたらします.ところが,研究が進むに従い,CagA自身にはあまりIL-8産生能はなく,cag PAIを通して注入された別の物質(ペプチドグリカンなど)にIL-8産生能があることがわかってきました.しかしcag PAI陰性のH. pyloriに感染した人の胃粘膜でもIL-8の産生は非感染者に比べると高度で,cag PAI以外にもIL-8産生に関与する因子はあるはずとの仮説のもと,筆者らは新しい病原因子発見に奔走し,2000年にouter inflammatory protein(OipA),2005年にduodenal ulcer promoting(DupA)というIL-8誘導因子を発見・命名しました.H. pylori感染による病原性の研究は,一つのサイトカインを取り巻く物語であります.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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