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文献詳細

雑誌文献

検査と技術38巻11号

2010年10月発行

文献概要

オピニオン

混沌とする空気感染

著者: 金光敬二1

所属機関: 1福島県立医科大学感染制御・臨床検査医学

ページ範囲:P.1065 - P.1065

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 感染症の伝播を考えるうえで感染経路を考えることは重要である.医学教育においても感染経路を示す用語はいくつも使用されてきた.例えば,垂直感染,水平感染,経口感染,糞口感染,経皮感染,経気道感染などである.しかし,米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention,CDC)では,感染経路を,接触感染,飛沫感染,空気感染の三つに集約した.これは感染制御学では,医師,看護師,臨床検査技師,薬剤師,事務職員を含めた医療従事者すべてに容易に理解してもらうためであり,感染予防策につながる分類を目指したからである.

 以前は,空気感染を起こす病原体は,水痘ウイルス,麻疹ウイルス,結核菌の3種類だけ考えればよかった.これらの患者は陰圧空調の病室に入室させ,医療従事者はN95マスクをつけることが必要となる.ところが疫学的あるいは実験的なデータから,SARS(severe acute respiratory syndrome)ウイルス,ノロイウルス,インフルエンザウイルス,ライノウイルス,アスペルギルス,レジオネラ,エボラウイルスなども空気感染する可能性が指摘されている.ライノウイルスは風邪症候群の原因の一つとなるウイルスであり,アスペルギルスにいたっては普通の環境から分離される真菌である.そうするとN95マスクをもっと頻繁に使用しなければいけないようにも思える.ここで空気感染に対する解釈が深くかかわってくる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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