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文献詳細

雑誌文献

検査と技術38巻11号

2010年10月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈遺伝子〉

ファーマコゲノミクス検査の運用指針について

著者: 横田浩充1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院検査部

ページ範囲:P.1081 - P.1084

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はじめに

 薬剤服用後の血中動態・副作用の発現は,個々の患者で異なる.例えば,等量のお酒(アルコール)を飲んでも,個人個人でその酔い方には明らかな差が生じる.この機序は薬剤代謝にかかわる薬物動態(pharmacokinetics,PK)および薬物受容体などの薬剤感受性にかかわる薬力学(pharmacodynamics,PD)の両面から解明されてきた.すなわち,個々のPKおよびPDに関与する遺伝子の違いが薬剤の反応性に影響するといった知見である.

 薬剤の投与前にPKおよびPDに関与する遺伝子検査を行うことで,薬物の反応性,動態,副作用の発現が予測できれば,個々の患者に応じた安全で効果的な薬物治療,いわゆるオーダーメイド医療が実現できる.当院では2005年7月より臨床ゲノム診療部,薬剤部,企画情報運営部,検査部および消化器内科,循環器内科,神経内科などの診療科を中心としてPharmacogenomics Working Groupを立ち上げ,薬剤代謝酵素遺伝子検査の院内実施を実践している1)

 本検査は遺伝学的検査(生殖細胞系列遺伝子検査)に該当する.したがって,適切な診療・検査体制を整備するには,遺伝医学関連10学会2)による「遺伝学的検査に関するガイドライン」(2003年)の指針に基づき施行されなければならない.一方で,ファーマコゲノミクス(pharmacogenomics,PGx)検査は遺伝学的検査に該当するが,その目的は薬剤の効果・副作用を予測する指標・手段である.単一遺伝子病などを確定診断する遺伝学的検査と同じ取り扱いが適用されたのではその施行と普及に大きな障壁となる.このため,PGx検査の実施において,診療の実際に即した運用指針の策定が求められていた.

 2009年3月,日本臨床検査医学会,日本人類遺伝学会,日本臨床検査標準協議会の3団体から「ファーマコゲノミクス検査の運用指針」が公表された.その後,2009年11月に改訂がなされた.

 本講では本指針を紹介し,今後のPGx検査の進展・普及に期待したい.

参考文献

1) 横田浩充,矢冨裕:薬剤応答性遺伝子検査と個別薬物療法.検査と技術 34(増):1033-1038,2006
2) 日本遺伝カウンセリング学会,日本遺伝子診療学会,日本産科婦人科学会,日本小児遺伝学会,日本人類遺伝会,日本先天異常学会,日本先天代謝異常学会,日本マススクリーニング学会,日本臨床検査医学会,家族性腫瘍研究会:「遺伝学的検査に関するガイドライン」(平成15年8月)(http://jshg.jp/http://jshg.jp/resources/data/10academies.pdf
3) 厚生労働省:「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」(平成16年12月24日通達,平成18年4月21日改正)(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/170805-11a.pdf)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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