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文献詳細

雑誌文献

検査と技術38巻11号

2010年10月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈生理〉

生理検査のリスクマネジメント

著者: 谷田部真由美1 内田京子1 竹田義彦2 松木隆央2

所属機関: 1新赤坂クリニック超音波検査科 2新赤坂クリニック

ページ範囲:P.1089 - P.1093

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はじめに

 2007年に医療法,医師法などの改定が行われた.改定点の一つに「医療安全対策の義務化」が挙げられる.医療機関の管理者は医療の安全を確保するために,医療安全管理を行わなくてはならない.具体的には,①医療安全管理指針の策定,②医療安全管理委員会の設置,③年2回程度の職員研修の実施,④医療事故の報告,などの医療安全の確保を改善するための方策が挙げられる1)

 「患者取り違え手術事件」「消毒液点滴誤注入事件」などがきっかけで,近年,医療の安全管理(危機管理:リスクマネジメント)の必要性は高まってきてはいたが,それが義務化された.

 臨床検査部も例外ではなく,精度の高い検査を行うのは当然で,検体(被検者)取り違えや検査情報の流出などに対するリスクマネジメントにも,積極的に取り組む必要がある.まず,事故(アクシデント)や事故にはならなかったヒヤリハット(インシデント)を収集することから始める.次に,それを分析し,その対策を考え,実施し,そして実施状況を評価する1)

 本稿では,生理検査について考える.検体検査同様,精度の高い検査を行うことや被検者取り違え,検査情報の流出などの事故を防止することは当然ながら,検体検査にはない,生理検査特有のリスクマネジメントも必要となる.それは,検査対象が個性をもったヒトであり,被検者と検者が1対1で,時に個室で検査を行い,さらに被検者の協力がなければ精度の高い検査が行えないことにある.また,リスクは被検者にも検者にも存在する.

 当院は,人間ドックが中心のクリニックである.被検者は検査への理解・協力は十分できるが,お客様意識が強い.また,検査結果はほとんどが異常なしか,あってもわずかな異常で,より精度の高い検査が求められるが,数もこなさなければならない.さらに,無症状なため,見逃すと少なくとも1年はそのままになるという,入院・外来検査とは少し異なる状況にある(入院・外来検査では,被検者には主訴があり,被検者は検査によりその原因を明らかにしたいという意志がある.また,一つの検査で異常がない場合には他の検査が行われ,それで異常所見が見つかる場合もある).そのような状況下での生理検査(上・下腹部超音波,乳房超音波,心電図,眼底・眼圧,聴力,呼吸器,骨評価)に寄せられた,被検者からの投書や検者からのヒヤリハット報告書から,被検者のリスクマネジメントを,検者への「検査中に不愉快な思いをしたことがあるか」という聞き取り調査から,検者のリスクマネジメントを考える.

参考文献

1) 全国保険医団体連合:2007年医療法改定 医療安全管理義務化等への対応.(医科・歯科共用)月刊保団連(臨増) 945:1-17,2007
2) 東京海上日動メディカルサービス(株)メディカルリスクマネジメント室:リスクマネージャーのための医療安全実践ガイド.日本看護協会出版会,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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