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検査と技術38巻12号

2010年11月発行

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OXA型カルバペネマーゼ産生性多剤耐性Acinetobacter baumanniiの解析

著者: 長野則之12 長野由紀子2 外山雅美12 諏訪直生1 松井真理2 荒川宜親2

所属機関: 1船橋市立医療センター 微生物検査室 2国立感染症研究所細菌第二部

ページ範囲:P.1190 - P.1192

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はじめに

 アシネトバクター属菌は,通常土壌や水などの自然環境中に生息し,またしばしば健常人の皮膚からも見いだされる好気性のブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌で比較的乾燥環境に強い.現在,少なくとも17の種名と15のgenomic speciesが確認されているが,なかでも臨床の現場ではAcinetobacter baumannii(A. baumannii)が日和見感染症の起因菌として高率に分離される.A. baumanniiは本質的にセファロスポリン耐性であるが,菌体外に存在するDNA断片を取り込んで自己の染色体DNAなどに組み込む機構をもつため容易に抗菌薬に耐性化しうる.特に,2000年以降近隣諸国を含め海外ではカルバペネム系薬を含めたより広範囲の抗菌薬に耐性を獲得した多剤耐性菌の出現,蔓延化が認められるようになった.これらの多剤耐性A. baumanniiが感染患者の治療を困難にしており,さらには病院環境中で長期間生存可能なことから人工呼吸器関連肺炎など重篤な院内感染症にかかわり臨床上問題となってきている.

 一方,多剤耐性A. baumanniiは国内ではいまだ稀な耐性菌であり,2009年2月の福岡での院内感染事例の報告1)を機に徐々に認知されつつあった.しかしながら,特に2010年9月からは複数の大学病院や医療機関の院内感染事例が報告されるようになってきており,本菌の早期認知と迅速な院内感染対策実施の重要性が認識された.当センターでは2009年7月に米国からの輸入事例と考えられる創部感染症より多剤耐性A. baumanniiの分離が確認され,直ちに院内感染対策の徹底化を図り感染の拡大には至らなかった.本稿では,このような新型の多剤耐性菌についてより理解を深める目的で主要な薬剤耐性機構を含め分子学的特性を解析した知見を報告する.

参考文献

1) 高田徹:韓国からの持ち込み例を端緒とした多剤耐性Acinetobacter baumanniiによるアウトブレイク事例.病原体検出情報IASR 31:197-198,2010
2) 山岸由佳,三鴨廣繁:愛知県の大学病院における多剤耐性Acinetobacterの検出事例.病原体検出情報IASR 31:200-201,2010
3) Doi Y, de Oliveira Garcia D, Adams J, et al:Coproduction of novel 16S rRNA methylase RmtD and metallo-β-lactamase SPM-1 in a panresistant Pseudomonas aeruginosa isolate from Brazil. Antimicrob. Agents Chemother 51:852-856,2007
4) Ko KS, Suh JY, Kwon KT, et alu:uHigh rates of resistance to colistin and polymyxin B in subgroups of Acinetobacter baumannii isolates from Korea. J Antimicrob Chemother 60:1163-1167,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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