検査と技術38巻13号

2010年12月発行

技術講座 病理

術中迅速細胞診の工夫および問題点

著者： 佐々木政臣¹

所属機関： ¹大阪市立大学医学部附属病院病理部

ページ範囲：P.1214 - P.1218

新しい知見

　2010年4月1日から診療報酬点数表が改定され，病理診断の項目に，手術の途中における胸水・腹水などの術中迅速細胞診が新たに加わり，1手術につき1回450点を算定することができるようになった．さらにまた，専門医が診断を行った場合には細胞診断料240点を月1回算定することが可能になった．このことは，術中迅速細胞診が通常の細胞診とは特に区別された重要な診断業務であることが評価されたものと思われる．当院では胃癌の術中腹腔洗浄液の細胞診を開始してから20年あまりになるが，当初は迅速対応ではなく通常業務として行ってたが，2000年頃より迅速対応となり，近年では乳癌のセンチネルリンパ節(sentinel lymph node)の術中迅速捺印細胞診が加わり，さらに最近では内視鏡室などの臨床側に出向くベッドサイド細胞診，出張細胞診の依頼も加わり業務が多様化するととに，今後の細胞診の方向性として，チーム医療への参画，治療計画，クリニカルパスとして細胞診の重要性が高まっている^1）．

参考文献

1) 森木利昭，高橋保，植田庄介，他：ベッドサイド細胞診の実際と意義．病理と臨床　23：600-604，2005

2) 岩本明美，広岡保明，尾崎桂三，他：乳癌のセンチネルリンパ節術中診断における迅速捺印細胞の有用性．日本臨床細胞学会誌　31：931-936，1992

3) 野口昌邦：乳癌におけるセンチネルリンパ節生検(4)臨床研究の動向と臨床応用．病理と臨床　22：467-471，2004

4) 中山富雄，竹中明美：肺癌におけるベッドサイド細胞診，術中捺印細胞診の判定基準と有用性．病理と臨床　27：1166-1170，2009

5) Lee A, Krishnamurthy S, Sahin A, et al:Intraoperative touch imprint of sentinel lymph nodes in breast carcinoma patient. Cancer　96：225-231，2002

6) 南雲サチ子，元村和由，春日井務，他：乳癌におけるセンチネルリンパ節生検(2)細胞診断．病理と臨床　22：455-458，2004

7) 国寛久秋，森吉臣：術中迅速細胞診．病理と臨床　19：56-60，2001

8) 佐々木政臣，若狭研一，桜井幹己，他：術中腹腔洗浄液にみられるcell balls様細胞集塊の免疫細胞化学的検索．日本臨床細胞学会誌　31：931-936，1992