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文献詳細

雑誌文献

検査と技術38巻4号

2010年04月発行

文献概要

技術講座 病理

抗酸菌染色のピットフォール

著者: 赤松美佐保1 植嶋輝久1

所属機関: 1鳥取赤十字病院検査部

ページ範囲:P.261 - P.266

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新しい知見

 2009年2月に結核の医療基準が改正された.なかでも検査にかかわる事項として,赤血球沈降速度が削除され,培養検査を実施し陽性となった場合は必ず薬剤感受性検査を行うことを明記した.また,原則として単純X線撮影を行い必要に応じてCT検査を行うことが追記された.化学療法にかかわる事項として,リファンピシン(rifampicin,RFP)が抗結核菌薬に追加され,間歇療法が導入された.薬剤選択や投与基準量など詳細な使用方法についての規定は削除された.さらに,潜在性結核感染症の検査と診断に関する記述が追加されている.ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction,PCR)法に代わる新しい遺伝子増幅法としてloop mediated isothermal amplification(LAMP)法がある.栄研化学が独自に開発した方法で,現在は臨床試験段階にあり,2010年頃の製品化を目指し,2011年頃からその市場が立ち上がるようである.標的遺伝子の六つの領域に対して4種類のプライマーを設定し,鎖置換法を利用して一定温度で反応させることを特徴とする.増幅から検出までを1ステップの工程で行うことができ,増幅効率も高いため,高等な検査技術や専用検査装置をもたない医療機関においても遺伝子検査が可能となることが期待される.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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