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Stenotrophomonas maltophiliaと出血性肺炎
著者: 森慎一郎1
所属機関: 1国立がんセンター中央病院細菌免疫検査室造血幹細胞移植科
ページ範囲:P.306 - P.307
文献概要
S. maltophiliaは運動性を有するブドウ糖非発酵菌であり,その他のブドウ糖非発酵菌と同様,典型的な日和見病原体である.病原性は極めて低いため,無菌材料以外から分離された場合には,単なる菌交代現象を見ていることがほとんどであり,起炎菌と考えられるケースは稀である.しかし,医療の高度化に伴い,高度かつ遷延する免疫不全の患者が増加しており,このような患者には広域の抗菌薬が使用されることも多く,菌交代からさらに感染症を引き起こす例も,時にみられるようになっている1).本菌は本質的に多剤耐性菌であるため,感染症と診断された場合に使用できる薬剤は極めて限られており,治療に難渋することになる.また,本菌は乾燥には弱いものの,過酷な環境で生き長らえ,消毒薬にも抵抗性を示すことから,病院環境中の浴室,洗面台,ネブライザーなどの湿潤環境由来のアウトブレイクを引き起こすことがあり,院内感染対策上も重要である.実際,病院で用いられているクロルヘキシジン溶液,うがい薬,インジゴカルミン液などからの分離されたとの報告もある.
参考文献
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