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文献詳細

雑誌文献

検査と技術39巻1号

2011年01月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈一般〉

蓄尿検査の意義と注意点

著者: 小川真1

所属機関: 1千葉大学医学部附属病院腎臓内科

ページ範囲:P.48 - P.51

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はじめに

 生命活動の過程で産生された老廃物を最小限の水とともに尿として排泄し,その蓄積を防ぐことは陸上生活を営むうえで必要不可欠である.また摂取した水・電解質についても,最終的に摂取量とほぼ同量が尿中に排泄されることにより体内の恒常性が維持されている1).したがって,尿は腎泌尿器系の病態の把握に必須であるだけでなく,物質の摂取量やその代謝プロセスの状況を把握するうえで極めて重要な情報を提供している2~4).尿検査の特色としては,①非侵襲的であり,②定量測定が可能であり,③経時的変化も評価できることが挙げられる1).上述の②の特色が最も生かされるのが蓄尿検査である.最近は簡便迅速な随時尿検査が選択されることが多く,やや煩雑な蓄尿検査は敬遠されがちである2~4).さらに院内感染,特に多剤耐性緑膿菌伝播の原因の一つに蓄尿検査が挙げられており5),その適応は以前よりも厳密に考えるべきである.しかし蓄尿による一日尿排泄量の正確な測定が必要な物質も多い.本稿では最初に尿試料の特色を述べ,次に比較のために随時尿検査の概要を述べたうえで蓄尿検査の意義について述べる.

参考文献

1) 菱田明:尿からどういう情報を得るか.総合臨床 58:1165-1169,2009
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3) 大和田一範,渡辺毅:蓄尿検査で得られる情報.総合臨床 58:1240-1244,2009
4) 勝尾勝,田中博之,折田義正:腎機能(GFR)尿蛋白測定ガイドライン.日本腎臓学会.東京医学社,2003
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6) 糟野健司,木村秀樹:尿検体の種類・採取・保存.総合臨床 58:1198-1201,2009
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9) 小寺恵美子:蓄尿添加剤「ユリメジャー・タブレット」.検査と技術 37:90-94,2009
10) 日本腎臓学会(編):エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009.東京医学社,2009
11) 内田俊也:水・電解質異常.日腎会誌 44:18-28,2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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