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増刊号 緊急報告すべき検査結果のすべて―すぐに使えるパニック値事典 Ⅰ 生化学
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ〔AST〕《GOT》
著者: 前川真人1
所属機関: 1浜松医科大学医学部臨床検査医学
ページ範囲:P.737 - P.739
文献購入ページに移動アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase,ALT)とともに,アミノ基転移酵素である.一つのアミノ酸からアミノ基を奪い,そのアミノ基を他のα-ケト酸に移して別のアミノ酸を生成する酵素であり,補酵素としてピリドキサルリン酸(pyridoxal 5′-phosphate,PALP)を必要とする.細胞の可溶性分画に存在するため,細胞の傷害時に直接もしくはリンパを通って間接的に血管内に流入する,いわゆる逸脱酵素(releasing enzyme)である.また,ASTにはミトコンドリアに局在するアイソザイムが知られており,重度の細胞傷害や細胞の虚血で血中に出現する.心臓,肝臓,骨格筋,腎臓,赤血球などに幅広く含まれ,臓器(細胞)特異的とはいえないため,血清AST値上昇からどこに傷害があるかどうかは判定できないが,どこかで傷害が発生していることがわかる.赤血球中にも血漿の40倍多く含まれるため,溶血の影響を受ける.
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