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増刊号 緊急報告すべき検査結果のすべて―すぐに使えるパニック値事典 Ⅰ 生化学
ヘモグロビンA1c〔HbA1c〕
著者: 目黒周1 渡部直美2 武井泉3
所属機関: 1慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 2慶應義塾大学病院中央臨床検査部 3東京歯科大学市川総合病院内科
ページ範囲:P.789 - P.791
文献購入ページに移動赤血球中のヘモグロビンは流血中を循環している約120日間の間に血液中の糖類やそれらの代謝産物と結合する.この結合をヘモグロビンの糖化(glycation)という.糖化ヘモグロビンはもとのヘモグロビンとは電気的性質が異なるため,イオン交換カラムクロマトグラフィという方法で分離することができる.その主な成分がHbA1cであり,その蓄積の程度は赤血球が流血中にある期間の平均血糖値を反映する.値は総ヘモグロビン(Hb)量に対するHbA1cの割合(%)で表す.現在,糖尿病の管理における約1~2か月間の血糖コントロールの指標として頻用されており,大規模臨床研究の結果から血糖コントロールの目標値としてのHbA1cの値が糖尿病学会より示されている.また,2010年より糖尿病の診断基準の一部としても使用されることになった.糖尿病学会の標準測定法では安定型HbA1cを測定するよう定められているが,現実的には不安定型も含めて測定する機器もある.また,HbA1cの標準法は高速液体クロマトグラフィ(high performance liquid chromatography,HPLC)法であるが,その他にも免疫学的な測定法やアフィニティ法が使用されている.これらの測定法間や分析する機器のメーカーによる測定値の差が認められる.HPLC法,免疫学的測定法については,日本糖尿病学会のHbA1c標準品に合わせて測定値を正しく補正してあれば,異なる医療機関での測定値でも互換性がある.
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