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文献詳細

雑誌文献

検査と技術39巻10号

2011年09月発行

文献概要

増刊号 緊急報告すべき検査結果のすべて―すぐに使えるパニック値事典 Ⅳ 微生物

検出された場合に医師に緊急に報告すべき微生物―腸管出血性大腸菌

著者: 大西健児1

所属機関: 1東京都立墨東病院感染症科

ページ範囲:P.851 - P.853

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腸管出血性大腸菌とは

 腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli,EHEC)は下痢原性大腸菌の一つで,細胞傷害性の毒素を産生する.この毒素はベロ毒素あるいは志賀毒素などといわれることから,EHECはベロ毒素産生性大腸菌(verotoxin-producing Escherichia coli,VTEC)あるいは志賀毒素産生性大腸菌(Shiga toxin-producing Escherichia coli,STEC)ともいわれている.ベロ毒素(志賀毒素)はベロ毒素1(verotoxin1,VT1)とベロ毒素2(verotoxin2,VT2)の二つに大別され,VT1は志賀毒素1(Shiga toxin1,Stx1),VT2は志賀毒素2(Shiga toxin2,Stx2)とも呼ばれている.VT1はA亜群に属する赤痢菌の一部が分泌する毒素でもあり,VT2はVT1と約55%の相同性を示すとされている.

 EHECは菌の表面にあるO抗原(細胞壁由来)とH抗原(鞭毛由来)によって多くの血清型に分類されている.感染者数が多いものは腸管出血性大腸菌O157(EHEC O157)であるが,O18,O26,O111,O128などO157以外のO抗原を保有する大腸菌のなかにもベロ毒素を産生するものがあり,EHECに含まれる.なお,O157とはO抗原として157番目に発見された抗原を有する菌ということである.さらにEHEC O157のうちベロ毒素を産生して重篤な状態を引き起こすことがあるのは,H抗原がH7(O157:H7)とH-(O157:H-)の二つの血清型に属する菌である.

 EHECの感染経路は経口感染で,菌が付着した飲食物を介して感染する.特にEHEC O157は少量の菌量で感染が成立する.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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