文献詳細
増刊号 緊急報告すべき検査結果のすべて―すぐに使えるパニック値事典
Ⅷ 薬物検査
文献概要
検査の概要
強心薬であるジゴキシン(digoxin,DIG)は,主にうっ血性心不全(congestive heart failure,CHF)や心房細動(artrial fibrillation,Af)などの上室性頻脈性不整脈に対して用いられる薬剤である.DIGが心筋細胞のNa+/K+-ATPase(ナトリウムポンプ)を阻害することにより,心筋細胞内のNa+濃度が上昇する結果,心筋細胞のNa+/Ca2+交換機構を介して細胞内にCa2+が流入し,細胞内Ca2+濃度が上昇することで心収縮力が増強する.一方で,DIGは房室結節の有効不応期を延長し,房室間の刺激伝達を抑制することで,Afにおいて心拍数を低下させる作用も示す.DIGの血清中濃度と,心臓の臨床症状および副作用には相関関係があることが知られているが1),後述するようにDIGの治療濃度域は非常に狭いため,DIG服用患者においては臨床症状のモニターに加えて慎重な血中濃度モニタリング(therapeutic drug monitoring,TDM)が重要である.
なお,強心薬としてはジギトキシン(digitoxin,DTX)も長く用いられており,TDMも実施されていたが,DTXは2008年10月に製造中止となり,2010年3月には薬価基準から削除されたことから,本稿では解説を割愛させていただく.
強心薬であるジゴキシン(digoxin,DIG)は,主にうっ血性心不全(congestive heart failure,CHF)や心房細動(artrial fibrillation,Af)などの上室性頻脈性不整脈に対して用いられる薬剤である.DIGが心筋細胞のNa+/K+-ATPase(ナトリウムポンプ)を阻害することにより,心筋細胞内のNa+濃度が上昇する結果,心筋細胞のNa+/Ca2+交換機構を介して細胞内にCa2+が流入し,細胞内Ca2+濃度が上昇することで心収縮力が増強する.一方で,DIGは房室結節の有効不応期を延長し,房室間の刺激伝達を抑制することで,Afにおいて心拍数を低下させる作用も示す.DIGの血清中濃度と,心臓の臨床症状および副作用には相関関係があることが知られているが1),後述するようにDIGの治療濃度域は非常に狭いため,DIG服用患者においては臨床症状のモニターに加えて慎重な血中濃度モニタリング(therapeutic drug monitoring,TDM)が重要である.
なお,強心薬としてはジギトキシン(digitoxin,DTX)も長く用いられており,TDMも実施されていたが,DTXは2008年10月に製造中止となり,2010年3月には薬価基準から削除されたことから,本稿では解説を割愛させていただく.
参考文献
1) 松崎貴志,平岡聖樹,篠崎公一(訳):ジゴキシン.篠崎公一,平岡聖樹,渋谷正則,他(監訳):薬物動態学と薬力学の臨床応用―TDMの正しい理解のために―(日本語第一版).メディカルサイエンスインターナショナル,pp365-390,2009
2) Sameri RM, Soberman JE, Finch CK, et al : Lower serum digoxin concentrations in heart failure and reassessment of laboratory report forms. Am J Med Sci 324:10-13,2002
3) 幸田幸直:強心配糖体(ジゴキシン,ジギトキシン).伊賀立二,乾賢一(編):薬剤師・薬学生のための実践TDMマニュアル,じほう,pp103-121,2004
4) Kaneko T, Kudo M, Okumura T, et al : Successful treatment of digoxin intoxication by haemoperfusion with specific columns for beta2-microgloblin-adsorption (Lixelle) in a maintenance haemodialysis patient. Nephrol Dial Transplant 16:195-196,2001
5) Dasgupta A : Endogenous and exogenous digoxin-like immunoreactive substances. Am J Clin Pathol 118:132-140,2002
6) Morris RG, Jones TE, Goldsworthy SJ, et al : Suspected DLIS interference in the Dimension DGNA digoxin assay method and the clinical application of the revised digoxin target range. Ther Drug Monit 28:454-457,2006
7) Steimer W, Müller C, Eber B : Digoxin assays : Frequent, substantial, and potentially dangerous interference by spironolactone, canrenone, and other steroids. Clin Chem 48:507-516,2002
添付文書(2010年7月改訂)
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