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文献詳細

雑誌文献

検査と技術39巻11号

2011年10月発行

文献概要

オピニオン

ブランチラボの効果

著者: 佐野道孝1

所属機関: 1国立循環器研究センター臨床検査部

ページ範囲:P.1001 - P.1001

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 ブランチラボとは臨床検査室の運用形態の一種で,アウトソーシングの範疇に入るものである.特定の検体検査分野を検査センターに業務委託するが,人材派遣ではないということをまず理解する必要がある.ブランチラボという言葉のとおり検査センターの出先機関として業務を行うが,人材派遣ではないので病院に所属する検査技師とは指揮命令系統が異なる.例えば,技師長が直接的にブランチラボ職員に業務命令を下すことはできない.この検査室の二重構造が多くの運用上の弊害をもたらしているのがブランチラボの実態である.しかし,この構造上の欠陥は契約内容や運用上の努力で,ある程度は回避できるかもしれない.ブランチラボは多くの問題点を抱えているが,ブランチラボという手法が全くだめだということではなく,ブランチラボにも評価できる面がある.要はブランチラボに検査室の将来を託すときに何を求めるかの明確な展望が必要と思われる.

 ブランチラボの効果を考えるとき,経営的側面と運用的側面の両面からの評価が必要であろう.ブランチラボ導入施設においてその導入前後を比較すると,総検査技師数は増加している病院が多くある.この意味することは人的な余裕が生まれるということで,運用的メリットといえる.例えば,病院として検査技師を増やせない状況下において生理検査を強化したいとき,検体検査をブランチラボ化することにより,病院所属の検査技師を生理検査にシフトすることが可能になる.検査室全体では人員増による効果で,診療に対し大きなアピールと貢献につながる.しかし,経営効率だけを考えて,単なる検査室の外部委託化や人件費の削減を目的とした導入の場合,まず病院所属の技師のリストラが始まる.検査室の二重構造という欠陥と相俟って,検査室が崩壊し悲劇の歴史が始まるのである.ブランチラボで効果を上げるには,構造上の欠陥を埋める努力が必要であるし,病院検査室とブランチラボが信頼のおけるよきパートナーの関係でなければならない.協調関係がないと人材育成や運用面で多くの問題が発生するのは当然の結果である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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