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文献詳細

雑誌文献

検査と技術39巻12号

2011年11月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈微生物〉

ノロウイルス抗原検査キット(クイックナビTM-ノロ)の使用法

著者: 加藤大介1

所属機関: 1デンカ生研株式会社試薬研究開発部

ページ範囲:P.1107 - P.1110

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はじめに

 ノロウイルスは毎年秋冬期に流行する感染性胃腸炎の病原ウイルスの一つである.ヒトに感染するノロウイルスは大きく二つの遺伝子群genogroupI(GI),genogroupII(GII)に分けられ,さらにGI,GII合わせて30種類以上の遺伝子型genotypeに分類される1)

 ノロウイルスの感染経路は多岐にわたっている.汚染食材を食すことによる感染(食品→ヒト),ウイルス保有調理従事者により汚染された食材の喫食(食品→ヒト),感染者との濃厚な接触による感染(ヒト→ヒト),吐物などからノロウイルスの付着した塵埃などを介した感染(空気感染)などが報告されている.24~48時間の潜伏期の後に出現する主な臨床症状は下痢,嘔吐,吐気,腹痛であり,発熱,頭痛,筋肉痛を伴うことがある.臨床症状は通常1~3日で回復するが,症状が回復してもウイルスが便中へ排泄される期間は長期であることが報告されている2).そのため回復後の患者の便が感染源となる二次感染の可能性が高い.また,ノロウイルスの流行がみられた施設の調理従事者の約6.6%に不顕性(感染が成立していながら臨床的症状を示さない)事例が報告されており3),同様に感染源となる可能性がある.

 「ノロウイルス感染の予防指針」4)では,ノロウイルス感染対策の基本は,①感染予防と②感染拡大対策とされている.感染拡大対策としてイムノクロマト法を原理とした試薬を用いて迅速・簡便な検査を行い,ノロウイルス感染(疑)者を早期に特定し,適切な治療とともに二次感染防止策をとることが重要であり,検査陰性者に対しては遺伝子検査を行い,適切な治療とともに二次感染対策を行うことが望まれる,とされている.

 本稿ではノロウイルス迅速診断試薬であるクイックナビTM-ノロについて,測定原理,検体採取方法および採取時の注意点,操作方法,使用に関しての注意点,検査に影響する便成分について述べる.

参考文献

1) Okada M, Ogawa M, Kaiho I, et al : Genetic Analysis of Noroviruses in Chiba Prefecture, Japan, between 1999 and 2004.J Clin Microbiol 43:4391-4401,2005
2) 武田直和:食品媒介ウイルス感染症.Jpn J Food Microbiol 25:1-6,2008
3) Ozawa K, Oka T, Takeda N, et al : Norovirus infections in symptomatic and asymptomatic food handlers in Japan. J Clin Microbiol 45:3996-4005,2007
4) 田中智之,位田忍,浅利誠志,他:ノロウイルス感染と予防指針.臨床とウイルス 39:155-160,2011
5) 山崎謙治,左近直美,伊吹てるみ,他:イムノクロマト法を用いたノロウイルス簡便検出キットの評価.検査と技術 26:772-773,2008
6) 高橋伸方,和田智顕,池田政憲:NICUにおけるノロウイルスのpseudo-outbreak:新生児便検体におけるノロウイルス迅速診断キットの高頻度の偽陽性.小児感染免疫 22:223-226,2010
7) Lopman BA, Reacher MH, Vipond IB, et al : Epidemiology and cost of nosocomial gastroenteritis, Avon, England, 2002-2003.Emerg Infect Dis 10:1827-1834,2004
8) 佐野和三:感染症簡易迅速検査キットの現状.検査と技術 38:365-370,2010
9) 稲野浩一:免疫クロマトグラフィー法―キットの性質と信頼性.臨床と微生物 34:493-498,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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