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Laboratory Practice 〈微生物〉
マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法による細菌の分類と同定
著者: 石田康行1
所属機関: 1中部大学応用生物学部応用生物化学科
ページ範囲:P.190 - P.194
文献購入ページに移動医療の現場では,感染症の原因究明やその治療法決定などを目的として,病原体を含む一連の細菌の分類および同定が日常的に行われている.従来,細菌種の分類・同定は,形態的特徴,生理・生化学的性状や化学分類学的性状の違いに基づいて行われてきた.しかしながら,これらの手法では,微生物に対する専門的知識が必要であることや,分類にしばしば長時間を要することが問題点として指摘されている.さらに,近年では,分子生物学や遺伝学的分析手法の進展により,DNAや蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列を解析し,分類する方法が上記の短所を補う方法として利用されている.この方法では,形態学的手法と比較して解析時間の大幅な短縮が実現されたが,依然として煩雑な前処理操作を要するといった問題があり,多数の検体を一度に解析することは容易ではない.
こうしたなかで最近,マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(matrix assisted laser desorption/ionization-mass spectrometry,MALDI-MS)が,煩雑な試料前処理を行うことなく,細菌種によってはその属や種を迅速に分類・同定できる方法として注目されている.この手法では,μgオーダーの極微量の細菌試料を用いて,細菌細胞中に含まれる蛋白質などの成分を高感度に検出し,さらに,質量スペクトル上の当該成分のピークパターンから細菌類の種類を迅速かつ簡便に分類・同定することができる.本稿では,まずMALDI-MSの原理と細菌試料の測定における試料調製法を簡単に説明し,次に本法による細菌種の分類および同定例を概説する.
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