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文献詳細

雑誌文献

検査と技術39巻3号

2011年03月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈生化学〉

Biacoreを用いた蛋白質相互作用解析

著者: 川崎健治1 菅野光俊1 山内一由2 本田孝行3

所属機関: 1信州大学医学部附属病院臨床検査部 2筑波大学大学院人間総合科学研究科(臨床医学系)疾患制御医学専攻臨床分子病態検査学 3信州大学医学部医学科病態解析診断学講座

ページ範囲:P.195 - P.201

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はじめに

 Biacoreは,表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance,SPR)現象を利用した分子間相互作用解析装置である.Pharmacia Biosensor(現GEヘルスケアバイオサイエンス:GE)社は,高感度なバイオセンサーになりうる原理としてSPRに着目し,その感度に見合ったプロテインチップやマイクロタス(micro total analysis system,μ-TAS)を使った微量測定系を築き,また使いやすい相互作用解析ソフトの開発を行って1989年にSPR法による分子間相互作用解析装置BIAcoreの発売を開始した.近年では,他社からもSPRを原理に用いた分子間相互解析装置が発売され,より一般的になってきている.SPR法が他のさまざまな相互作用解析法と異なる点は,非標識かつリアルタイムに生体内分子間の親和性(アフィニティー)だけでなく速度論的解析(カイネティクス)を行うことができることである.例えば,酵素免疫測定法(enzyme-linked immunosorbent assay,ELISA)による相互作用解析では濃度から解離定数(KD)を求める.この方法から得られる情報は,分子間の「結合の有無」と他の標的蛋白と比較することによる「親和性の強さ」である.一方,SPR法は結合・解離の過程をリアルタイムに追跡する.そして結合速度定数(Ka)と解離速度定数(Kd)を求めてKDを算出する.Biacoreでは,KaとKdを求めることによって「結合の有無」や「親和性の強さ」がわかるだけでなく,その結合と解離が早いか遅いかの解析ができる.さらに駆使すると濃度測定や熱力学的解析も行うことができる.

 SPR法は,プロテインチップに固定化できること,液体として流路を流すことができることをクリアすれば多くの物質がサンプルとして利用可能である.蛋白質だけでなく,核酸,糖質,脂質,細胞,ウイルス,細菌,血漿,低分子化合物などが対象になりうる.本稿では,SPRを使った蛋白質相互作用解析法として最も普及しているBiacoreを採り上げ,その基礎知識を解説し,実例として筆者らの蛋白質相互作用解析実験を紹介する.

参考文献

1) Biacore3000 Instrument Handbook.GEヘルスケア・ジャパン株式会社,2003
2) 生体分子相互作用解析 攻略ガイドwith Biacore(ビアコア).GEヘルスケア・ジャパン株式会社,2008
3) 橋本せつ子,森本香織(編):Biacoreを用いた相互作用解析実験法.シュプリンガー・ジャパン,2009
4) Sugano M, Yamauchi K, Kawasaki K, et al:Sialic acid moiety of apolipoprotein E3 at Thr (194) affects its interaction with beta-amyloid (1-42) peptides. Clin Chim Acta 388:23-129,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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