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文献詳細

雑誌文献

検査と技術39巻5号

2011年05月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈輸血〉

自己血輸血の有用性

著者: 川端みちる1 曽根伸治1 津野寛和1 髙橋孝喜1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院輸血部

ページ範囲:P.370 - P.373

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はじめに

 わが国の同種血輸血用血液は,すべて赤十字血液センターに献血された血液を原料として製造されており,核酸増幅検査(nucleic acid amplification testing,NAT)によるウイルス〔B型肝炎(hepatitis B virus,HBV),C型肝炎(hepatitis C virus,HCV),ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus,HIV)〕検査,不規則抗体検査,保存前白血球除去,初流血除去などが施されており,安全性の高いものになっている.また,移植片対宿主病(graft-versus host disease,GVHD)の予防を目的とした放射線照射済みの製剤も供給されている.保存前白血球除去により,血液保存中に白血球から遊出しうるサイトカインも低減化可能であり,白血球中のサイトカインが関与する免疫学的な副作用(アレルギー反応,熱発など)の予防や白血球を介して感染する細菌〔エルシニア菌(Yersinia enterocolitica)など〕の混入やサイトメガロウイルスの感染伝播が防止できる.また,初流血除去によって,献血時の皮膚毛囊に常在する細菌の混入防止が期待できる.また,NATの導入により,ウイルス感染症のウィンドウ期が短縮でき,ウイルス感染伝播のリスクは非常に減少している.しかし,検査の限界や未知の感染症ウイルスの存在,また,白血球除去の限界や白血球以外(赤血球,血小板,血漿蛋白など)の抗原に対する免疫学的副作用を防止することは困難である.

 上記の免疫学的および感染性副作用のリスクをほぼ完全に回避しうる方法として,わが国では自己血輸血が注目され,広く実施されている.本稿では,自己血輸血の目的や実施方法などについて概説する.特に当院では,「自己血外来」を全国に先駆けて設置し,自己血輸血のための問診,自己血の貯血,管理,供給のすべての工程を輸血部医師,看護師,臨床検査技師が高い専門性をもって担当している.当院の自己血輸血についても要約する.

参考文献

1) 遠山博,柴田洋一,前田平生,他:輸血学,改訂第3版.中外医学社,2004
2) 血液製剤の使用にあたって,第4版.じほう,2009
3) 福岡自己血輸血研究会(編):自己血輸血ハンドブック.九州大学出版会,1995
4) 「自己血輸血:採血及び保管管理マニュアル」.厚生省薬務局(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/dl/5a.pdf)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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