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疾患と検査値の推移
劇症型A群溶連菌感染症
著者: 立石順久1 織田成人1 仲村将高1
所属機関: 1千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学
ページ範囲:P.522 - P.528
文献購入ページに移動A群溶血性連鎖球菌(group A Streptococcus pyogenes,GAS)は咽頭炎,扁桃炎などの局所炎症の起因菌として知られており,菌体代謝物質は猩紅熱を,さらに続発性として急性糸球体腎炎やリウマチ熱などを引き起こす.これらは一般に小児に好発するが,抗菌薬をはじめとする治療の進歩により,現在では発症頻度が低下している.
しかし,1990年代からはstreptococcal toxic shock syndrome(STSS)と呼ばれる劇症型GAS感染症が注目されるようになった.劇症型GAS感染症は,皮膚軟部組織の著しい壊死を伴うことが多く,急激な進行と高い死亡率から“人喰いバクテリア”感染症として話題にもなった.GASはVibrio vulnificusと並んで“人喰いバクテリア”感染症の代表的な起因菌である.
近年,劇症化し多臓器不全に陥る要因として,スーパー抗原活性を有する発熱毒素(streptococcal pyogenic exotoxin,Spe)やM蛋白により惹起される高サイトカイン血症の関与が明らかになるなど,発症メカニズムが徐々に解明されつつある.しかし,本症は一度発症すると非常に急激,かつ激烈な経過をたどることから,いまだに死亡率の高い病態であり,救命率の向上のためには本症を早期に認識し,積極的な治療を行うことが欠かせない.
そこで本稿では,本症の早期診断やその後の病勢の把握に必要となる,病態や検査所見などの特徴を中心に解説する.
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