icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術39巻7号

2011年07月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈生化学〉

低コリンエステラーゼ血症とコリン作動性クリーゼ―排尿障害治療薬の副作用の判別指標および判別値

著者: 刈米和子1

所属機関: 1財団法人東京都保健医療公社荏原病院検査科

ページ範囲:P.544 - P.547

文献購入ページに移動
はじめに

 検査現場において低コリンエステラーゼ(cholinesterase,ChE)血症の場合,まず疑うのが肝硬変などの重篤な肝障害,有機リン中毒,稀な先天性低ChE血症などである.

 しかし,いずれにも当てはまらない原因不明の低ChE血症に遭遇することがしばしばあり,このような際,考慮すべきもののなかにコリン作動性クリーゼがある.

 コリン作動性クリーゼは,検査現場ではなじみが薄いと思われるが,薬剤科や臨床現場ではコリン作動薬投与時に注意しなければならない副作用として知られている.

 当院では,気管挿管状態で救急搬送されて来た患者でコリン作動性クリーゼの事例を経験したが,ChEは5U/l(基準範囲:213~501U/l)と極低値を示していた1).入院患者であれば,まずコリン作動薬投与の有無および投与歴を確認することが重要であるが,救急患者または転院患者などでは,ChE阻害薬服用の有無あるいはChE阻害薬投与前のChEに関する情報の把握が困難なことが多いため,ChEを測定したとしても個体間差の大きいChE活性2,3)のみでコリン作動性クリーゼを予測することは難しい.

 そこで,コリン作動性クリーゼの客観的診断指標が必要となるが,それに関する報告はこれまでなかった.

 今回,診療科および薬剤科の協力により,国内において最も汎用されている排尿障害治療薬であるウブレチド(R)(一般名:臭化ジスチグミン,鳥居薬品)によるコリン作動性クリーゼの判別値を策定したので紹介したい4)

参考文献

1) 栗原利和,大石千歳,金民日,他:臭化ジスチグミンの増量により急性膵炎を併発したコリン作動性クリーゼの1例.日本消化器病学会雑誌 106:441,2009
2) 日本臨床化学会クオリティマネジメント専門委員会:生理的変動に基づいた臨床化学検査36項目における測定の許容誤差限界.臨床化学 35:144-153,2006
3) 刈米和子:最新臨床化学検査法―コリンエステラーゼ―.Med Technol 26:1333-1341,1998
4) 刈米和子,島谷佳見,藤田淑香,他:コリン作動性クリーゼのリスク回避指標の探索.臨床病理 58:972-978,2010
5) 山口脩:排尿筋低活動の病態と臭化ジスチグミンの適正使用について.泌尿器外科 16:861-865,2003
6) 宮下理恵子,大羽美津子,小島康宏:臭化ジスチグミンの適正使用を目指して―コリン作動性クリーゼ回避の取り組み―.日病薬誌 38:37-39,2002
7) 上田喜一,西村正雄:農薬による中毒,有毒リン剤.中毒症 基礎と臨床.朝倉書店,pp175-185,1975
8) Osawa S, Kariyone K, Ichihara F, et al:Development and application of the reagents for serum cholineterase activity measurement using benzoylthiocholine iodide. Clin Chim Acta 351:65-72,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?