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Laboratory Practice 〈免疫血清〉
新規血管炎症マーカーpentraxin3(PTX3)の意義(役割)と測定法
著者: 井上健司1
所属機関: 1順天堂大学医学部附属練馬病院循環器内科
ページ範囲:P.613 - P.616
文献購入ページに移動概 説
pentraxin3は1992年,Breviarioらによってinterleukin(IL)-1誘導遺伝子として初めて報告された(この時点ではpentraxin3と言われていた)1).彼らはヒト臍帯静脈内皮細胞をIL-1で刺激し得られたcDNAライブラリーからpentraxin3を同定した.pentraxin3はCRP(C-reactive protein)と同じpentraxin superfamilyに属する急性炎症性反応蛋白であり,同ファミリーはカルボキシル基末に共通のpentraxinドメインをもつ.CRPやSAP(serum amyroid protein)はshort pentraxinとして属している(図1).pentraxin3はアミノ基末に特有のドメインをもつが,CRPと最大に異なる点はその発現分布特異性にある.炎症刺激〔Toll like受容体アゴニスト,TNF(tumor necrosis factor)α,IL-1βなど〕により急速にマクロファージ,樹状細胞,線維芽細胞,内皮細胞でその発現が誘導される.
一方,CRPと異なり,肝臓にはその発現はほとんどない2).つまり動脈硬化巣に存在する細胞で特異的に発現している.さらに興味深い所見としては,好中球内ではpentraxin3は豊富に存在する(mRNAレベルの発現は前骨髄球や骨髄球,後骨髄球など好中球の前駆細胞にしかない).炎症刺激により放出されたpentraxin3の一部は好中球細胞周囲にある'NETs(neutrophil extracellular traps)'(突出したDNAによって構成されている)内に局在し,病原菌を捕獲する3).この好中球での動態,すなわち,他の細胞では炎症刺激によりmRNAの発現誘導がかかるのに対し,好中球ではすでに貯蔵していた蛋白が放出されるということは,pentraxin3値の測定は炎症刺激直後に,かつ定量的に行える可能性があり,理想的なバイオマーカーの可能性が高い.なお心筋に関しては,当初発現している,と報告があったが,東京大学先端科学技術研究センターシステム生物医学ラボラトリーがweb(http://www.lsbm.org)で公開しているジーンチップのデータでも心筋のmRNA発現はほとんど認めておらず,3年前のSalio,Mantovaniらの論文では発現していないとされている(発現していたのは心筋に浸潤していた好中球によると論じられている)4).
pentraxin3は1992年,Breviarioらによってinterleukin(IL)-1誘導遺伝子として初めて報告された(この時点ではpentraxin3と言われていた)1).彼らはヒト臍帯静脈内皮細胞をIL-1で刺激し得られたcDNAライブラリーからpentraxin3を同定した.pentraxin3はCRP(C-reactive protein)と同じpentraxin superfamilyに属する急性炎症性反応蛋白であり,同ファミリーはカルボキシル基末に共通のpentraxinドメインをもつ.CRPやSAP(serum amyroid protein)はshort pentraxinとして属している(図1).pentraxin3はアミノ基末に特有のドメインをもつが,CRPと最大に異なる点はその発現分布特異性にある.炎症刺激〔Toll like受容体アゴニスト,TNF(tumor necrosis factor)α,IL-1βなど〕により急速にマクロファージ,樹状細胞,線維芽細胞,内皮細胞でその発現が誘導される.
一方,CRPと異なり,肝臓にはその発現はほとんどない2).つまり動脈硬化巣に存在する細胞で特異的に発現している.さらに興味深い所見としては,好中球内ではpentraxin3は豊富に存在する(mRNAレベルの発現は前骨髄球や骨髄球,後骨髄球など好中球の前駆細胞にしかない).炎症刺激により放出されたpentraxin3の一部は好中球細胞周囲にある'NETs(neutrophil extracellular traps)'(突出したDNAによって構成されている)内に局在し,病原菌を捕獲する3).この好中球での動態,すなわち,他の細胞では炎症刺激によりmRNAの発現誘導がかかるのに対し,好中球ではすでに貯蔵していた蛋白が放出されるということは,pentraxin3値の測定は炎症刺激直後に,かつ定量的に行える可能性があり,理想的なバイオマーカーの可能性が高い.なお心筋に関しては,当初発現している,と報告があったが,東京大学先端科学技術研究センターシステム生物医学ラボラトリーがweb(http://www.lsbm.org)で公開しているジーンチップのデータでも心筋のmRNA発現はほとんど認めておらず,3年前のSalio,Mantovaniらの論文では発現していないとされている(発現していたのは心筋に浸潤していた好中球によると論じられている)4).
参考文献
1) Breviario F, d'Aniello EM, Golay J, et al : Interleukin-1-inducible genes in endothelial cells. Cloning of a new gene related to C-reactive protein and serum amyloid P component. The Journal of biological chemistry 267:22190-22197,1992
2) Rolph MS, Zimmer S, Bottazzi B, et al : Production of the long pentraxin PTX3 in advanced atherosclerotic plaques. Arterioscler Thromb Vasc Biol 22:e10-14,2002
3) Jaillon S, Peri G, Delneste Y, et al : The humoral pattern recognition receptor PTX 3 is stored in neutrophil granules and localizes in extracellular traps. J Exp Med 204:793-804,2007
4) Salio M, Chimenti S, De Angelis N, et al : Cardioprotective function of the long pentraxin PTX 3 in acute myocardial infarction. Circulation 117:1055-1064,2008
5) Inoue K, Sugiyama A, Reid PC, et al : Establishment of a high sensitivity plasma assay for human pentraxin 3 as a marker for unstable angina pectoris. Arterioscler Thromb Vasc Biol 27:161-167,2007
6) Yamasaki K, Kurimura M, Kasai T, et al : Determination of physiological plasma pentraxin 3 (PTX 3) levels in healthy populations. Clin Chem Lab Med 47:471-477,2009
7) Latini R, Maggioni AP, Peri G, et al : Prognostic significance of the long pentraxin PTX 3 in acute myocardial infarction. Circulation 110:2349-2354,2004
8) Matsui S, Ishii J, Kitagawa F, et al : Pentraxin 3 in unstable angina and non-ST-segment elevation myocardial infarction. Atherosclerosis 210:220-225,2010
9) Suzuki S, Takeishi Y, Niizeki T, et al : Pentraxin 3, a new marker for vascular inflammation, predicts adverse clinical outcomes in patients with heart failure. American heart journal 155:75-81,2008
10) Tong M, Carrero JJ, Qureshi AR, et al : Plasma pentraxin 3 in patients with chronic kidney disease : associations with renal function, protein-energy wasting, cardiovascular disease, and mortality. Clin J Am Soc Nephrol 2:889-897,2007
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