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文献詳細

雑誌文献

検査と技術4巻2号

1976年02月発行

文献概要

基礎から応用へ

生態系と寄生現象

著者: 大家裕1

所属機関: 1順大・寄生虫

ページ範囲:P.103 - P.106

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1.ミクロフィラリアの定期出現性
 ヒトにフィラリア症を起こさせる糸状虫(線虫の仲間)の一つに,Wucheleria bancroftiと呼ばれる種類がある.日本の南部をはじめ,ほぼ全世界の熱帯,亜熱帯に分布しており,蚊を中間宿主としている.ヒトのリンパ系に生息する成虫が有性生殖を行い,雌虫はミクロフィラリアと呼ばれる仔虫を生み出すが,これが血流中に出て,末梢血中を流れているおり,蚊の吸血により蚊の体内に入って成長し感染仔虫となるのである.この感染仔虫は蚊の吸血の際,再びヒトに侵入する機会を得,終局的にヒトのリンパ系に棲みつくのであるが(図1),このミクロフィラリアがヒトの末梢血流中に出現する時間帯について,定期出現性(turnus)ということが知られている(図2).つまり,末梢血流中へのミクロフィラリアの出現が,主として夜間であったり昼間であったりするのである.
 日本,アジア,アフリカ,中南米にみられるものでは,この夜間出現性が極めて明瞭で,ミクロフィラリア出現の時間帯は,夕方の6時ごろから翌朝の6時ごろまでである.夜中の12時ごろには,末梢血中のミクロフィラリア数はピークに達するので,夜間強周期性と呼ばれている.タイのジャングル地帯の住民の間にみられるものでは,上に述べたような明瞭な周期性がなく夜間弱周期性と呼ばれている.また,ポリネシアの住民の間にみられるものでは,ミクロフィラリアの末梢血出現は昼間に認められ,しかも周期性が明瞭でないところから昼間弱周期性と呼ばれている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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