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文献概要
文豪と死
川端康成
著者: 長谷川泉1
所属機関: 1医学書院
ページ範囲:P.392 - P.392
文献購入ページに移動川端康成の人となりには,孤児体験が色濃くまつわりついている.数え年3歳で父を,4歳で母を,8歳で祖母を,11歳で姉を,16歳で祖父を失い,肉親とことごとく死別した.処女作は最後の肉親であった祖父のみとりをした「十六歳の日記」である.自らも孤児根性という言葉を自嘲的に使い,その病患が自分ながらいやだと甘えの感傷を反省している,代表作である「伊豆の踊子」にも,この孤児根性が現れている.孤児根性によるかたくなな心のゆがみが人の言葉を素直に受け取れない悪いしきたりになっていた,ところが一高生として初あて伊豆に旅した旅情のなかで踊り子の一行と一緒になり下田まで同行する人間的なつきあいで,踊り子たちから"いい人だ"と言われて,それを素直に受け取ることができた青春の哀感がこの作品に盛り込まれている.心が浄化されたのである.
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