icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術40巻1号

2012年01月発行

文献概要

疾患と検査値の推移

橋本病―変動するその病態

著者: 小澤安則1

所属機関: 1虎の門小澤クリニック

ページ範囲:P.33 - P.37

文献購入ページに移動
はじめに

 橋本病は慢性甲状腺炎とほぼ同義語として使われ,その名前からもわかるように一般には慢性に経過する病気であり,その動きは緩やかで経時的な変化に乏しいものと捉えられがちである.しかしながら,臨床症状に変化がなく,変動が一見全くないように見える症例であっても細かく観察すると血中遊離サイロキシン(free thyroxine,FT4)値や血中甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone,TSH)値の経時的な変動,ぶれ(標準偏差)は正常人のそれよりも大きく,また時として甲状腺機能や甲状腺腫が大きく変化する場合がある.これらの揺れや変動をもたらす大きな理由は,橋本病の原因である自己免疫機序の揺れ,変動であり,また他の因子として,橋本病は正常甲状腺よりも環境因子,特にヨードなどによって機能が影響されやすい性質があることが挙げられよう.本稿では誌面の制約上,このなかでも主に自己免疫機序の経時的な変化による臨床像や検査データの変動について解説する.ヨードの影響についてはまたの機会に解説する.

参考文献

1) 小澤安則:Silent thyroiditisの甲状腺基礎疾患について.ホルモンと臨床 34:49-66,1986
2) 小澤安則:無痛性甲状腺炎の診断と治療.伴良雄(編):よくわかる甲状腺疾患のすべて.永井書店,pp45-52,2003
3) Amino N, Tada H, Hidaka Y, et al : Postpartum autoimmune thyroid syndrome. Endocr J 47:645-655,2000
4) Takasu N, Komiya I, Nagasawa Y, et al : Exacerbation of autoimmune thyroid dysfunction after unilateral adrenalectomy in patients with Cushing's syndrome due to an adrenocortical adenoma. N Engl J Med 322:1708-1712,1990
5) Tsatsoulis A : The role of stress in the clinical expression of thyroid autoimmunity. Ann N Y Acad Sci 1088:382-395,2006
6) Elenkov IJ : Glucocorticoids and the Th1/Th2 balance. Ann N Y Acad Sci 1024:138-146,2004
7) Elenkov IJ, Chrousos GP : Stress system--organization, physiology and immunoregulation. Neuroimmunomodulation 13:257-267,2006
8) 小澤安則:日常的な健康問題におけるCRH ACTH-コルチゾル系の重要性:自己免疫性甲状腺疾患.内分泌・糖尿病・代謝内科 32:287-293,2011
9) バセドウ病患者の生活指導:生活一般について.日本甲状腺学会(編):バセドウ病治療ガイドライン2011.南江堂,pp114-122,2011
10) Takeoka K, Hidaka Y, Hanada H, et al : Increase in serum levels of autoantibodies after attack of seasonal allergic rhinitis in patients with Graves' disease. Int Arch Allergy Immunol 132:268-276,2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら