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Laboratory Practice 〈移植医療〉
―移植医療と検査⑬―ニューモシスチスの検査
著者: 髙橋孝1 後藤美江子2
所属機関: 1北里大学大学院感染制御科学府感染症学研究室 2東京医学技術専門学校臨床検査技師科Ⅱ部
ページ範囲:P.1369 - P.1373
文献購入ページに移動以前,ニューモシスチス(Pneumocystis,Pc)はPneumocystis carinii f. sp. hominisと呼ばれていたが,ラットなどの動物より分離されるもの(P. carinii)とヒトより分離されるものとを分ける目的で,2005年,P. jirovecii(ニューモシスチス・イロベチイ)と命名された.これは,Pcが酵母様真菌に属するため国際植物命名規約に従ったものである.命名の前半は本菌の寄生部位や生体内での病態(ニューモ→空気・肺+シスト→囊胞)を意味し,命名の後半は乳児の剖検肺より本真菌を同定した寄生虫学者の人名(Jirovec)が表記されている1).
生活史上,Pcは活発に増殖する栄養型と休眠期である囊子に分類され,生体内では肺胞にてその増殖が進展する.すなわち,囊子内小体が脱囊して小型の栄養型となり,合体して大型栄養型を呈する.この栄養型はⅠ型肺胞上皮細胞に接着寄生しながら,囊子を経て急速に分裂増殖することで,栄養型と囊子の両者が肺胞内に充満する状態を呈する2).このような病態から,肺画像所見としてスリガラス陰影(肺内の血管陰影の濃度よりも低い淡い陰影)を呈し,血液ガス交換上は拡散障害〔肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)の上昇〕を伴うⅠ型の呼吸不全(PaCO2の増加を伴わないPaO2の低下)を示すこととなる.
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